自分がどこの大学を検討しようか、という時に真っ先に検討材料とするのが偏差値ではないでしょうか。
検討し始めの頃ですと、多くの場合は学校で行うBenesseの模試の結果で表される偏差値などを見ながら、どのあたりならば入れそうか、ということをまず見て行くことが多いでしょう。
そこで、まずは偏差値とは何かの定義を今一度確認しましょう。
偏差値=(自分の得点ー平均点)÷標準偏差×10+50
となり、標準偏差とは、得点の散らばりを表す数値になります。
ですが、別に算式とかどのような仕組みで算出されるのかというところはあまり重要ではないです。
大事なのは、たった1つだけで、「真ん中を50として、そこから上や下にどれくらい離れているか」という位置を示すものだ、ということだけ捉えればいいでしょう。
もちろん、そんなことは皆さん知っていることであるのですが、では、その偏差値が実際にどのような意味を持つのか、ということについては注意をして見ていきたいポイントがいくつかあります。特にここは、生徒は十分に認識をしているケースが多いですが、保護者の方々は意外と偏差値については誤解をしていることも多いので、要注意、というところです。
Contents
偏差値において注意すべき3つの点
偏差値は出している会社によってこんなに違う
まずはこちらをご覧ください。
同じ学校、同じ学部でも出されている偏差値はこうして並べてみると全然違います。偏差値というのは、基本的には「受ける模試」ごとに変わってくるものですので、出ている偏差値に対して比べることができるのは、「同じ模試」を受けた時の偏差値だけです。もう少し広げても、東進の模試の偏差値は東進で比べる、河合は河合で比べる、というところまでです。
ご覧の通り、もしも東進の模試を受けて「偏差値62」が出て、河合の偏差値と比べたら、思いの外楽勝!みたいな誤解が生まれます。
偏差値は、大学に1つ、ではなく、模試ごとに1つ、です。少なくとも、模試の銘柄が違うもの同士の偏差値を比べることはできません。ここは、しつこいのですが、保護者の方々は一緒くたにしてしまうことがまま見られますので、要注意なポイントです。
偏差値の高い学校がいい学校?
では偏差値というのは学校の良し悪しを表すものか?と言われれば、ここについてはキッパリと「そうではない」と断言します。
日大と明治、もちろん同じ学部で比べてみれば偏差値ではほとんどが明治が上です。では、日大より明治はいい大学なのか?といわれれば、そこはなんとも言えません。
例えば、日大は医学部や薬学部などまで備えた学生数日本トップの総合大学であるのに対して、明治や早稲田という大学は、医療分野の学部を持たないため総合大学ではない、という議論もあります。また、就職率ということになれば、実就職率ということになると、実は総合大学よりも単科大学の方が上であるのが一般的ですが、それらの単科大学の多くは総合大学よりも偏差値的には下位に属することが多いです。
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大事なことは、大学を選ぶにあったての価値尺度は、決して偏差値だけではないし、偏差値がメインでもない、ということです。この点も十二分に心にとどめおきたいところです。
ではいい大学とは何か、と言われれば、その共通解はないでしょう。一人一人の進みたい道、持っている価値観、家族などのバックボーンによって、望ましい、ふさわしいと思われるものが最適な大学であって、その判断に偏差値が介在する余地はそんなに大きなものにすべきではありません。
実はそんなにあてにならない偏差値
さらにもう1点付け加えると、偏差値はそれほどあてにならない、という実際もあります。極端なケースをイメージしてみましょう。例えば現役3年生の9月のマーク模試で偏差値70が出て、早稲田法学部がA判定だったとします。では、この子がこのままの勉強をして早稲田の法学部に合格できるのか、と言えば、それは決してそうとは言えません。
なぜならば、マーク模試で出されている問題はあくまでセンターレベルであり、早稲田の法学部で出される問題は、出題形式も内容も、およそ似ているところがないからです。マーク模試ができるから、早稲田の記述ができるかといえば、そこは大いに疑問符のつくところでしょう。
事例から見る、「指標は偏差値だけではない」
バリバリラガーマンのAくんの場合
現役3年生のAくんはバリバリのラガーマンで、高3の11月まで花園目指して頑張っていました。県大会の準決勝で敗退したのが11月の中頃で、そこまではラグビー漬け。そこから大学受験のスタートです。
県内ではトップ5に入る進学校の子で、学校の成績もそれなりに上位でしたが、11月に初めて模試を受けたら早慶マーチ、全部がE判定。偏差値も40台。
11月偏差値40台、全部E判定からのスタートで逆転
さあどうしよう、ということで始めたのが、どうせいきたいのは早稲田だけなので、早稲田の政経と商学部だけに絞って、過去問の傾向から、自分にとって必要な知識とスキルを割り出して、7割前後まで得点できるようなレベルだけを目指して、それだけ、のために勉強をしました。
センターを1月に受けましたが、センターの勉強は一切していないので得点率は3教科で7割程度。とてもとてもセンター利用なんておこがましい、というところです。
ただ、過去問だけは、政経も商学も、大体6割前後までは取れるようになっていきました。結果、早稲田の政経と商学は合格しましたが、センター利用で出したマーチは全落ち、という偏差値から見ればいびつな結果になりました。
が、そういうものです。偏差値は、あくまでその時点での「その試験問題」においての立ち位置を表す指標に過ぎない、という1面があります。
偏差値とは「自分」と「全体」の立ち位置を明確にするモノサシ
このようにして見て来ますと、偏差値とは大学の良し悪しを示すものでも、絶対的に自分と志望する大学の差異を表すものでもありません。ただただ、その試験を受けた時点での「自分」とその試験を受けた「全体」との立ち位置のモノサシ、であるに過ぎません。
つまり、偏差値は、結果指標としてあるのではなくて、現状の立ち位置を知り、自分の目的となる志望校の合格に向けて、どのような努力をすべきなのかを知る、マイルストーンである、ということです。
偏差値を、追い求める結果指標としてみて、模試での偏差値を追いかけてそこにこだわると、ともすればその勉強は、志望校の問題をクリアするために必要な学習とは違うものだったりします。そうすると、最終的な結果そのものにも好ましくない影響を及ぼしかねません。
ですから、偏差値とは、それを見て、そこからの学習計画を練り直す、あるいは検証する材料であり、一喜一憂してこの「検証」をしないならば、せっかく偏差値を出す試験を受けて来た意味がない、といっても過言ではないでしょう。
まとめ
よく、「偏差値至上主義はおかしい」みたいな議論を目にすることがあります。でも、こうして見てみればお分かりの通り、その議論がそもそもおかしいのです。偏差値というのは、学校につけられたレッテルではなくて、あくまでその学校に入りたい人と、その学校に入れる可能性のある人のマークでしかありません。それを知ることで、その学校を目指す人に、どのくらいの勉強をしていけばいいのか、という指標を与えるものです。
イメージとしては、暗い海を航海する時の灯台の光のようなものです。それがなければ、私たちはただ闇雲に勉強することになりかねません。「あそこに島・目的地がある」と照らしてくれるのが偏差値、です。もし真っ暗な海を、灯台の光なく進むとしたら、不安で怖くて進めない、という状況になりかねません。
だからこそ、偏差値は自分の勉強計画に「活用するものだ」という認識をしっかり持つことが重要です。
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