国公立二次試験や難関私立大学の入試問題では頻出の「論述問題」。志望校の入試問題を見て、「こんなの書けるようになる気がしない…」と感じてしまう人もいるかもしれません。世界史の論述問題はしっかり対策をしないと絶対にできるようにはならないものです。受験本番までまだまだあるし、とたかをくくらずに、今のうちからできることは始めていくことをおすすめします。
今回は、世界史論述の概観と対策法について書いていきます。
論述問題を解く上での心構え
はじめに、論述問題を解くにあたって必ずおさえておかなければいけないことをお伝えします。それは「問われていることに対して過不足なく答える」という姿勢を持つことです。入試で論述を出題する大学は、基本的にその出題に関して深い知識をもっている教授が採点します。その時に、問われていることに対して適切に答えるということができていない場合は、ほとんど読まれることなく0点をつけられてしまうかもしれません。
問題の一部分だけを見て、それに関して知っていることをただ羅列するというようなものは答案とはいえません。問われたことに対しての「解答」となっている形で記述しなくてはいけないのです。
これについては、実際に練習していく中で添削を受けて問題がないかどうか常に見てもらうようにしましょう。自分ではかなり書けたな、と思っている答案がまったく解答になっていないというケースもよくあります。
しっかり問題文の意図を理解し、適切な答えを作るためには問題を分類しておくことが効果的です。次の項で説明します。
大学入試世界史論述問題の種類
論述問題は、いくつかのパターンに分類することができます。覚えておくと解答作成に役立つので、ぜひ頭に入れておいてください。さまざまな分け方が考えられますが、ここでは「説明型」「経過型」「比較型」の3つに分類します。
「説明型」
Ex)「モンロー宣言の内容を60字以内で説明しなさい。」(2011年東京大)
論述といっても、長いものから短いものまで幅があります。60字~120字程度の比較的短めの論述問題は、この説明型のものが多い印象です。というのも、経過型や比較型はどちらも性質上要素が多く求められることが多くなるからです。
このタイプの問題を解くコツは、「なるべく多くのポイントにまんべんなく触れ、記述する」ということです。これができると、点がとりやすいです。例えば60字という制限があれば、3つから4つくらいは採点対象になるような事項を盛り込めるはずです。
「経過型」
Ex)「下線部(b)(※明治6年)に先立つ十数年間のうちに、ヨーロッパの国際関係は大きく変化した。この変化が準備し、この世紀の末にかけて顕著になる国際関係上の趨勢を視野に入れながら、この変化を説明しなさい。ただし下記の語句を全て必ず使用し、その語句に下線を引きなさい。」(語句:教皇 ヴェルサイユ 資本 バルカン アフリカ) (2011年一橋大)
大学入試世界史論述の花形といえるような型ではないでしょうか。最難関大学の大論述、200字~400字の問題に多くみられる形式です。この問題は非常に幅が広く、問題文に様々な要求がされていることも多いです。例題では、まず「国際関係の変化」は必ず説明しなければいけません。その上で、「この世紀の末にかけて顕著になる国際関係上の趨勢」にも触れなければいけないという高度な問題ですね。このようなとっつきづらい問題がいくらでも作れるのがこの「経過型」です。
経過型で問われることとしては、①「経過」「過程」「経緯」「歴史」など、時系列順に事象を書いていくもの。②「発展」「衰退」など、時系列順で書きながらもプラスのこと、マイナスのことのみを書かなければいけないもの。③「意義」「歴史的役割」など、結果とその影響について書くもの。④「変化」「変動」など、出来事の前と後を比較して書く必要があるもの。などが挙げられます。どれも微妙な違いですが、採点者に対して「私は問題で問われていることをしっかり理解できていますよ」ということを伝えられるような書き方をしなくてはいけません。しっかりと練習をしましょう。
「比較型」
Ex)「1850年代から1870年代半ばにかけての世界は、さまざまな点で顕著な時代的特徴を持っている。これは欧米における科学技術の進歩、経済の発展、国際政治の変化、そして、これらにもとづく欧米と他の地域との関係の新展開の中に認められる。この時代の特徴を、科学技術、経済、社会、政治の相互連関に留意し、前後の時代をも考慮しながら、600字以内で述べよ。解答には下記の語句を随意の順序で少なくとも一回は用い、また最初に用いたときに下線を付せ。」(語句:クリミア戦争 南北戦争 アロー戦争 明治維新 通信手段 鉄道建設 産業資本家 自由貿易 国民国家)
この型は、本当にレベルが高いです。例題に関しては、完璧に答えを作れる受験生が果たしているのかどうか。それどころか全国の高校の世界史を教えている先生でも難しいのではないかと思わされてしまいます。
とはいえそれはみんな一緒です。書ける範囲で点数を最大化することが重要なのです。それはさておき、この型はただ単に要素を書き連ねるだけではなく、様々な項目について共通点や相違点を見出しながら書いていく必要があります。例題では、「欧米と他の地域」「この時代と前後の時代」というふたつの対立軸があります。その軸にそって、「科学技術、経済、社会、政治の相互連関に留意し」ながら記述する必要があるということになります。
この型がなぜ難しいかというと、説明型や経過型と違ってここで問われていることは教科書などに直接書いてあることではないことが多いからです。自分で考え、論理を組み立てる力が必要になります。これはレベルが高いですから、まずはこの前の二つの型をしっかり書けるようになることをおすすめします。
前提となる知識
以前、一度記事で書きましたが論述問題を解くにあたり必要な3要素は、「通史の流れの理解」「用語の正確な暗記」「文章構成の知識」の3つです。最後の「文章構成の知識」は先に述べた論述問題の型、という部分です。
論述の前提となる知識は、通史の流れでいえば「教科書に記載されている出来事の経緯(前後関係、因果関係)を理解している」ということが大切です。出来事そのものの知識に加え、前後関係や因果関係もしっかりおさえていきましょう。また、用語の正確な暗記ということに関しては人名や出来事の呼称はもちおんのこと、重要な歴史的事項については年号まで覚えることをおすすめします。
世界史は科目の性質上、同じ時期に別の場所で起こったこと、いわゆるヨコの歴史について記述することが求められます。その時に、年号を覚えておくととても役に立ちます。
リンクしてある記事でより詳しく書いてありますので、ぜひ読んでみてください。
目安としては、センター試験の世界史の問題で安定して70点以上はとれるようになるまでは論述問題に取り組むことはなかなか難しいという印象です。
具体的な対策
前提となる知識をおさえた上で、いよいよ論述対策をしようとなったらとにかく「添削してくれる人を見つける」ことに最優先で取り組みましょう。論述問題は、自分だけでは採点もなかなか難しいです。もちろん、語数も短く、歴史的事象の説明だけが求められるような問題の場合は教科書を見返せばいいでしょう。しかし、文字数が多かったり、問題の設定自体が難しいような問題の場合には必ず添削をしてもらうようにしましょう。学校の先生などにお願いして添削してもらう習慣を早めにつけておくと良いでしょう。
そのうえで、とにかく書いていくことが大切です。いきなり何を書いたらいいかわからない、という人におすすめするのが「教科書の要約」です。章、項目ごとに200-400字程度で要約するのは論述問題への足掛かりとして非常に有効です。
また、いちいち書かなくても論述対策は可能です。私自身がよくやっていたのは、項目をひとつ決めてそれに関する流れなどを声に出してアウトプットするトレーニングです。これなら、少し時間があるときに簡単にトライすることができるのでおすすめです。
実際に論述を書く上では、方眼ノートを使うと便利です。いちいち字数を数えたりするのは大変なので、どれくらい書いたかが一目でわかるようなマスのあるものを使いましょう。
まとめ
論述は確かに難易度が高いものも多く、必要な知識がたくさんあって苦手意識をもっている人も多いと思います。しかし、大学受験の論述問題を「完璧に解く」必要はないのです。まずは受験生として書けなくてはいけないものを確実に書くこと、そしてその上でさらに加点を狙っていくようなイメージで問題ないでしょう。むしろ、ほとんど全員が苦手意識を持っている論述問題を自分の武器にするくらいの気持ちで挑戦してみてください。