これを英語で書けますか? 世界各国の名称 (2) 英語圏編・その1(アメリカ)

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書こうとすると意外と書けないかもしれない「国の名称」についてのコラム、今回は2回目です。前回は、世界の言語の多様性についてざっくりと話をしたあとで、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダといった西欧(自由主義)諸国の日本語での呼称と現地語での綴り、英語での綴りと形容詞・名詞形を見ました。わりと馴染み深い国名が並んでいたと思います。

今回からは、それらの国よりさらに馴染み深いであろう英語圏各国の名前を見ていきましょう。前回と同じく、おやつでも食べながらリラックスして読んでみてください。

具体的に「英語圏」とは

「英語圏」とは、英語が主要な言語として使われている国々のことです。今や英語はグローバル・ランゲージ、世界的な「共通語」(リンガ・フランカ)となっていますが、英語を母語・第一言語(公用語・事実上の公用語)とする国々を指して「英語圏 (English-speaking world)」と言います。

英語版のウィキペディアに、次のような地図が示されています。この地図で明るい緑色(黄緑色)で塗られているのが「英語圏」の中心的な国々です。英語で何かを読んだり書いたり話したりする以上、これらの国名は、英語で読み書き発話ができるようにしておく必要があります。

英語圏マップ

Image created by Sulez raz (CC BY-SA 4.0)

なお、地図内の暗めの緑色の国々(アフリカ大陸に多い)も「英語圏」に入りますが、大学入試ではこれらの国名は「見ればわかる」程度にしておけばよいでしょう。

青系で塗られているのは、いくつか定められている公用語のひとつが英語であるという国々。インドの言語事情(40以上も言語があって、互いに意思疎通するためには英語を使う、というもの)については、学校の教科書や副読本で取り上げられているのを読んだことがある人も多いのではないでしょうか。青系で塗られているのはそういった国々です。

黄色で塗られているのは非公式だけど英語が使われている国々、オレンジ色は英語が使える人が国民の大半を占めているものの英語が公用語にはなっていない国々(ヨーロッパに多い)、地図を目で見てわかりづらいのですが、薄いベージュのような色で塗られているのは少数の人が英語を使う国々で、真っ白なところは英語はほぼ使われていない国々です。日本は、韓国やベトナム、サウジアラビアなどと並んでこの地図では薄いベージュになっていますが、中国やロシア、トルコ、フランス、スペイン、メキシコ、ブラジルなどは真っ白です。

アメリカ: the United States of America, the USA

英語はイギリスの言語なのですが、現代社会では、「英語」と言って誰もが第一に思い浮かべるのは、アメリカ(アメリカ合衆国)かもしれません。この国名を英語で書くと、the United States of America, 略してthe U.S.A. となります。略したときにピリオドを入れるのはアメリカ式で、イギリス式ではピリオドは入れずにthe USAと書きます。試験の答案ではどちらを使ってもよいですが、1つの文章の中ではどちらかに統一するようにしましょう。

また、もっと短く、the United States (the U.S.) と言うことも非常に頻繁にありますし、さらに短くしてthe Statesと言うこともあります。いずれも、the込みでひとつの固有名詞、と覚えておきましょう。

「アメリカ」はAmericaなのではと思われるかもしれませんが、Americaという単語は特別な文脈(心情的な強調がなされる場合など)で用いるのが基本です。会話や文章の中で普通に「アメリカ」と言うときは、the United States of Americaなど、上に羅列した表現を使います。

【例文】

The United States of America is the world’s third largest country in size.
(アメリカ合衆国は、大きさでは世界第3位の国である)

Have you ever been to the United States?
(あなたはアメリカに行ったことがありますか?)

Thirteen years after small and hateful minds conspired to break us America stands tall and America stands proud.
(私たちをぼろぼろにしようと、憎しみに満ちた狭い考えの持ち主たちが共謀してから13年、アメリカは堂々と、誇り高く立っています)

 

3つ目の例文は、2001年9月11日のテロ事件から13年の記念式典でのオバマ大統領(当時)のスピーチの一節。Americaを繰り返し、深い思いを強調して聞き手の心をとらえ、その気持ちに寄り添うような、演説らしい表現です。全文を読みたい方は、こちらからどうぞ

アメリカ人; アメリカの: Americans

では、「アメリカ人」や「アメリカの」と言いたいときは、どうするのかというと、このときはthe United States of America系の表現ではなく、America系の表現になります。みなさんご存知のAmericanという単語ですね。「アメリカ人」は通例American peopleAmericansと言います(どちらを使ってもよいです)。

【例文】

Americans[American people] love baseball.
(アメリカ人は野球が大好きだ)

American musicians are popular all over the world.
(アメリカのミュージシャンは、世界中で人気がある)

最初の例文のAmericansは名詞の「アメリカ人」、2番目の例文では形容詞の「アメリカの」です。

the Americanで「アメリカ人一般」を総称する用法

なお、このAmericanに定冠詞のtheをつけて「アメリカ人一般」「アメリカ人というもの」を総称することについては、「ない」と断言している解説も見なくはないのですが、実際にはわりとよく見ます。(このtheの用法については、また機会を改めてお話しすることにしましょう。)

少し難しい例ですが、1973年にベトナム戦争やニクソン政権について、(アメリカから見た)外国でアメリカ批判が盛り上がっていたときに、あるカナダ人評論家(ラジオのコメンテーター)が「敢えてアメリカ擁護をする」として、次のような文で、「アメリカ人という人々」を讃えています(一文だけ引用しますが、興味のある方は、こちらのページで全文が読めます)。

【例文】

This Canadian thinks it is time to speak up for the Americans as most generous and possibly the least appreciated people on all the earth.
(この地球上で最も寛大で、そしておそらく最も過小評価されている人々として、アメリカ人のために声を上げるべき時が来ていると、このカナダ人は考える次第であります)

書籍のタイトルのようなものでも、〈総称のthe〉を使って「アメリカ人」を言う例はあります。例えば下記。ちなみにこの本の著者(イギリス人)は、前書きで「『アフリカン・アメリカン』や『ネイティヴ・アメリカン』のように、ハイフンを使ってアメリカ人を細分化するのではなく、このアメリカという国に居合わせた人々の物語を、本書では語っていこう」というようなことを述べています。

アメリカに関するトリビア

余談ですが、「アメリカ」を表す日本語の表現には「米国」というものもありますね。これは「アメリカ」の漢字での当て字表記、「亜米利加」にちなむもの。同じ漢字文化圏であるお隣の中国では「美利堅」(メリケン)由来の「美国」という表現を使います。(ちなみに「メリケン」は「アメリカン」のことです。日本語でも、小麦粉のことを「メリケン粉」ということがあります。)

アメリカ合衆国の首都はワシントンDC (Washington D.C.) です。D.C. は District of Columbia(コロンビア特別区)の頭文字で、かつての正式名称はWashington, District of Columbiaでした。

なお、「自由の女神」像のあるニューヨーク (New York) は最大の都市で経済の中枢ではありますが、首都ではありません。

この国がなぜ、単なるstateではなくthe United States(個々のstateの連合体。日本語の学術論文などでは「合衆国」ではなく「合州国」と表記されていることも時々あります)となったのかといったことも、非常に興味深いのですが、それはまた別の機会に譲るとしましょう。

下記の写真は、「ワシントンDC」について検索していて見つけました。米東海岸の都市、ボストンの公共図書館がFlickrにアップしているもので、1930年~45年の間に発行された版画の絵葉書です。ワシントンDC、ポトマック河畔の有名な桜並木を描いた、のどかな絵です。この桜の木々は、1912年に当時の東京市長・尾崎行雄がワシントンDCに寄贈したもので、100年以上を経過した現在も、人々にきらびやかな春の到来を告げています。1930年代には地元市民たちによる「桜祭り」が始まっていたそうなので、その様子を描いた絵葉書でしょうか。

この絵葉書が発行されたあと、日本とアメリカは戦争に突入します。戦争中は、どちらの国でも相手を敵視することが日常でした。でも桜並木も残ったし、この絵葉書も残っていて、ボストンの公共図書館がスキャンしてネットにアップしてくれていて、それを日本の私たちが眺めることができています。

東京では、ハナミズキが桜と入れ替わるようにして咲き出します。聞くところによると、東京がワシントンDCに贈った桜の苗木の返礼として、ハナミズキの苗木が贈られてきたそうですよ。

2013.04.23 和泉川 ハナミズキ 綿帽子
2013.04.23 和泉川 ハナミズキ 綿帽子 posted by (C)ひでわく (CC BY 2.1)

まとめ

「アメリカ」はthe United States (of America), 「アメリカ人」はAmerican(s). 「何を今さら」という基本的な単語かもしれませんが、うろ覚えは試験の際の失点に直結します。定冠詞のtheをつけるということも含め、今回は、これだけは絶対にしっかりと頭にたたきこんでください。

次回は英語の母国、イギリスについて書きましょう。

次回までの練習問題

次の日本語文を、英語で表してみましょう。

(1) 私はアメリカの歴史に興味があります。(Americanという単語を使わずに)
(2) アメリカの映画は世界中で見られています。(Americanという単語を使って)

 

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