これを英語で書けますか? 世界各国の名称 (6) 中南米、東欧・ロシア編

Moscow

「これを英語で書けますか?」というテーマで世界の国名を見てきたこのシリーズ、今回が最終回です。基本中の基本で、これを知ってるからといって点数がアップすることはないかもしれないけど、知らなければ得点できない(あるいは減点される)というポイントですから、受験までに時間がある今のうちに確認しておくことが有効でしょう。

前回まで5回に分けて、西ヨーロッパの主要国アメリカ合衆国イギリス英米以外の英語圏主要国アジアやアフリカ諸国について、国名(日本ならJapan)と形容詞形(Japanese)を改めて整理してきました。今回は中南米と東欧・ロシアを見ていきましょう。

中南米の国々

「アメリカ合衆国」のことはAmericaと言わず、the United Statesと言うようにすべきだと言われる理由は、「南北アメリカ大陸」があるからです。英語でAmericas(複数形)といえば、南北アメリカ大陸を総称する表現です。

北アメリカ大陸は、既に見たアメリカ合衆国(米国)カナダの2国がほとんどの面積を占めており、どちらも英語圏ですが(ただしカナダの一部はフランス語圏)、米国のすぐ南にあるメキシコから中米、南アメリカ(南米)にかけては、ほぼスペイン語圏です(スペイン人が入ってくる前からの現地語ももちろん使われていますし、ポルトガル語も使われていますが)。これらの国々を、「ラテン語系の言語を使う」ということから、Latin Americaと総称することがよくあります。

ちなみにスペイン語では [V] の音は [B] の音と区別されないので、例えばVenezuelaは現地では日本語表記の「ベネズエラ」に近い音かもしれませんが、英語では最初の [V] の音は [V] として発音されます。でもキューバの綴りは [V] ではなく [B] で、Cubaです。なかなかややこしいですね。

メキシコ: Mexico

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北米大陸の南端に位置するメキシコは、米国と国境を接しています。2016年の米大統領選で当選したドナルド・トランプ現大統領はその国境に壁を作ると息巻いていましたが、2018年5月現在、以前から設置されているフェンス以上のものが具体化したというニュースは特にないようです。ともあれ、トランプ支持者の中には「メキシコからの移民」「メキシコ経由で来る中南米からの移民」をひどく嫌っている人々もいて、ネットを使っていると、そういった人たちがTwitterなど個人が自由に発言できる場で「アメリカにいるなら英語を使え!」と叫んでいるのによく出くわします。これは「スペイン語を使っているメキシコ人(をはじめとするスペイン語圏の出身者)はアメリカ合衆国から出て行け!」という意味ですが、「アメリカ」自体が「南北アメリカ大陸」を表す概念である以上、「アメリカでは英語」という言説そのものがおかしいとよく指摘されています。

ともあれ、メキシコがスペイン語圏なのはスペインが植民地化していたからですが、スペイン語ではMexicoは「メヒコ」というように読みます。「メキシコ」という日本での国名は、英語での読み方に近いです(が、英語では最後が [ou] という二重母音になるので注意してください)。形容詞形は、Mexicanです(「メキシコの: メキシコ人」。なお、本稿では「~の」の意味に加えて「~人」の意味を表す場合も、煩雑さを避けるために「形容詞形」と表していますので、ご了承ください)。

中米: Central America

メキシコの南側、南米大陸と北米大陸をつないでいるへその緒のような形をした部分が「中米(中央アメリカ)」です。この地域にはコスタリカ (Costa Rica)ホンジュラス (Honduras), パナマ (Panama) など7つの国がありますが、大学入試という前提で見た場合、これらの国名が長文読解問題などに出てきたときに国名だとわかるようにしておけばよいと思われます。ただし、志望学部や個人的関心でそれ以上の知識を備えておきたいケースもありますから、個々のニーズに合わせてチェックしてみてください。「中米」についてのウィキペディア英語版の最初の一段落が役立ちます。

南米: South America

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南米大陸で最大の面積を占める国が、日本との縁もとても深く、サッカーの強豪で2014年ワールドカップ開催国のブラジルです。ブラジルは(スペイン語ではなく)ポルトガル語を使っていて、国名はポルトガル語ではBrasilと書きますが、英語ではBrazil(アクセントに注意。リンク先で音声を確認してください)です。形容詞形はBrazilianです。

同じくサッカーの強豪でワールドカップで二度の優勝・二度の準優勝を経験しているアルゼンチン(スペイン語圏)は、英語ではArgentina(発音&アクセント注意)です(日本語の「アルゼンチン」に近い形の英語のArgentineは、形容詞形)。ちなみにスペイン語では「アルヘンティーナ」という感じで発音されます。(この国名にはなかなか複雑な背景があります。興味のある方は、ウィキペディア日本語版を見てみてください。)

南米大陸の西側、ブラジルと反対側に位置するペルーは、16世紀に滅亡したインカ帝国をテーマにしたテレビ番組や雑誌の特集記事でおなじみですが、ブラジルと同じく、第2次世界大戦前に大勢の日本人が移民していった国でもあります。英語ではPeruと書きます(アクセント注意。第2音節です)。形容詞形が少し難しくて、Peruvianとなりますが、これはあえて覚えようとしなくてもよいでしょう。

同じく、南米大陸の西側に細く沿った形の国土を持つチリは、英語ではChileと書きます。この単語、英語として読むと、childの末尾のdを落としたような感じで読んでしまいそうになるのですが、英語での発音は日本語のカタカナの「チリ」とほぼ一致。スペイン語では同じ綴りで「チレ」というように発音するそうです。なぜでしょうね。また機会があったら調べてみて、書くことにしましょう。形容詞形はChileanです。

ところで日本にとってチリは地球の裏側ですが、実は日本とは太平洋を挟んで向かい合っています。1960年にチリで大地震が起きたときの津波が日本に到達し、東北地方などで大勢の方が亡くなりました。2011年の東日本大震災でも数十センチの津波がチリに到達しています。

ロシアと、西欧以外のヨーロッパの国々

さて、ぐるっと地球を一周するように見てきましたが、ここで再度、日本の西側に歩を進めていきましょう。今度は北の方です。

ロシア: Russia

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中国の北に位置し、2018年のサッカー・ワールドカップ開催国で、数々のフィギュアスケーターたちでも日本の人々に馴染み深いロシアは、英語ではRussiaです。形容詞形のRussianは「ロシアンルーレット」というカタカナ語にも入っていますね。

ちなみに、1917年に革命が起きてから1991年までは、日本では一般のニュースなどでは「ソビエト連邦(ソ連)」と呼ばれていたので、その時代を生きていた日本人にとって「ロシア」というのは歴史的な名称か専門用語のようなものでした。それが、ソ連崩壊でリアルな「国名」となったときには、「何があるかわからないものだな」と実感したものです。

ロシアの首都はモスクワです。英語ではMoscowと書きます。

旧ソ連および東欧諸国

冷戦の時代、東ヨーロッパ(東欧)の多くの国々はソ連の一部であったり、ソ連の強い影響下に置かれたりしていました。冷戦終結でそれらの国々の多くが独立し、やがては2000年代のEU(欧州連合)の東方拡大で、冷戦の時代には「西側」、つまり「敵」の側だったEUに加わったり、関係を構築したりするようになりました。

そういった国々の名前が、大学受験の英語と関係してくることはあまりないかもしれませんが、大学入試の長文読解問題はトピックが多岐にわたるものとなっていますので、日本で国際ニュースになっているような国の名前については、少なくとも「見ればわかる」ようにしておくことが望ましいでしょう。例えばウクライナは英語ではUkraine(発音注意)、ハンガリーHungary, 旧ユーゴスラヴィアのセルビアSerbiaで、クロアチアCroatia(発音注意)です。かつては旧ソ連の一部で、2015年に日本語の国名が「グルジア」から「ジョージア」に改められた国は、英語ではGeorgiaと書き表します。ちなみにこの語は、綴りも発音も米国のジョージア州を表す語とまったく同じです。

「日本の偉人」として英語の教科書で取り上げられていることもある杉原千畝が外交官として仕事をし、また「命のビザ」を発給したリトアニアは、第二次大戦後ソ連の一部として編入されていた「バルト三国」のひとつです。英語ではLithuaniaと書きます。これも、長文などで出くわしたときにうろたえないように準備をしておくとよい国名のひとつです。

余談: 「チェキア」……?


東欧といえば、しばらく前におもしろい話がありました。冷戦まではチェコスロバキアだった国が、冷戦体制崩壊後の1990年代にチェコとスロバキア(スロヴァキア)に分かれたのですが、そのチェコこと「チェコ共和国」が、諸外国で使われる英語ベースの国名を変更してほしいと言い出したのです。「チェコ共和国」は英語ではthe Czech Republicと言いますが、このCzechは形容詞なので、単独で国名を表すことはできず、「チェコ語」とか「チェコ人」を言うときはCzechで済むのに、「チェコ(という国)」を言うには長たらしくthe Czech Republicと言わなければならないという問題を解消すべく、1語で表せる「チェキア(Czechia)」という新名称を使ってほしいとチェコ政府が国際社会に呼びかけたのです(BBC)。

それから2年が経過しましたが、英語圏でニュースなどを見ている限り、Czechiaという名称が定着した感じは、正直、ありません。何かスポーツの国際大会があれば、開会式でのプラカードや選手のユニフォームにどう表示されているかを確認することもできるのですが、2018年の冬季オリンピック(ピョンチャン五輪)ではCzech Republicの名称を使っていたようですし、同年6月からのサッカー・ワールドカップにはチェコは出場しません。今後「チェキア」の名称が使われる機会は、果たしてあるのでしょうか?

世界を大まかに分けたときの地域名

さて、「大学入試で困らないために」という観点から、国名以上に重要かもしれないのが、「アジア」、「ヨーロッパ」などの大まかな地域名です。

これは大学入試では「知ってて当然の一般常識」のように扱われているのですが、いざ英語で書こうとするとスペルがうろ覚えで、結果的にスペルミスをして減点……ということが珍しくありません。入試では1点でも失わないようにしなければならないので、地域名のスペルのような「英語を使えるかどうか」という問題とはあまり深く関連しないようなところでミスをして失点しないよう、試験前に十分に確認しておきましょう。

以下はそれら地域名とその形容詞形を一覧表にまとめたものです。書けないものがあったら、鉛筆と紙を持ってきて10回書き、綴りを完全に覚えてしまいましょう。

地域名 英語表記 英語の形容詞形
アジア Asia Asian
東アジア East Asia East Asian
東南アジア Southeast Asia Southeast Asian
南アジア South Asia South Asian
西アジア West Asia West Asian
ヨーロッパ(欧州) Europe European
アフリカ Africa African
南北アメリカ(米州) Americas
北アメリカ(北米) North America North American
中央アメリカ(中米) Central America Central American
南アメリカ(南米) South America South American
ラテンアメリカ(中南米) Latin America Latin American
オセアニア Oceania Oceanian

※アジアとオセアニアを一緒に扱ったAsia Pacificという言い方もよく使われます。

「グローバル」

それから、案外書けない人が多いのが、「全地球規模の」「世界的な」という意味を表す「グローバル」。綴りはglobalです。受験生のみなさんの答案を見ていると、変なところでRが出てきたりVが出てきたりするめちゃくちゃなスペルに頻繁に遭遇するのですが、「Lが2つ」「VではなくB」ということは、しっかり覚えておいてください。特にスーパーグローバル大学に指定されている大学を志願する人にとっては、この単語がちゃんと書けないことは大きなマイナス材料です。

Globalという語の元になっているglobeは「球体」の意味ですが、そこから転じて「地球」のこと。英語では「地球儀」も単にglobeと言います。

地球儀とさまざまな国籍

まとめ

というわけで、全部で6回に分けて、世界の国々の名称を英語でどう書くかということを駆け足で見てきました。重要なものについては「~の」や「~人、~語」という意味を表す形(形容詞形)も示してあるので、あやふやなものについてはノートに書き出すなどして、覚える必要のあるものは確実に覚えてしまいましょう。

最初にも書きましたが、国名など固有名詞は、単語がわからないときに言い換えで対応することはできず、知らなければどうすることもできません。うろ覚えで書いてみてもスペルが不正確なら減点されてしまいますし、英文和訳の場合でも、間違って読んでしまったらやはり減点対象です。細かいことではあるのですが、細部をおろそかにしないことが確実に得点力をアップさせる上で重要なポイントのひとつ。試験までまだ時間があるうちに、しっかり確認しておきましょう。

本コラム第1回のクイズの答え

本コラムの第1回(2018年5月7日)の文面で、いくつかの国名を太字で示し「これを英語で書けますか?」と問いかけてありましたね。

連載の最後にあたり、その答えを入れ込んで、同じ文を再掲しておきましょう。ここまでの連載で言及していない国名も入っていますが、それらも確認してみてください。

北朝鮮 (North Korea) について、アメリカ (the United States of America, the U.S.A.) は何をどうするつもりでしょうか。2011年以降、独裁政権に対する民主化要求運動が内戦化し、非常に悲惨な状況になっているシリア (Syria) 情勢も緊迫の度を増すばかりです。貿易をめぐるアメリカと中国 (China) の緊張関係も目が離せません。自衛隊の日報をめぐる報道で、自衛隊が派遣されていた南スーダン (South Sudan) イラク (Iraq) の名前が再度、毎日のニュースに出てくるようになっています。

そうそう、6月からサッカーのワールドカップがロシア (Russia) で開催されますが、前回、2014年の大会は南米 (South America, Latin America) のサッカー王国、ブラジル (Brazil) で行われたのでしたね。ブラジル大会で3位になったオランダ (the Netherlands) は、ロシア大会では出場権を逃しました。ロシア大会に出ないヨーロッパ (Europe) のサッカー大国としては、ブラジル大会でまさかのグループリーグ敗退を喫したイタリア (Italy) も忘れてはいけませんね。また、前回大会でグループリーグを調子よく突破してトーナメントに進んだものの、開催国ブラジルを相手にPK戦で惜敗したチリ (Chile) も、今年の大会で見ることはできません。前回優勝国ドイツ (Germany) をはじめ、スペイン (Spain)フランス (France)アルゼンチン (Argentina)メキシコ (Mexico) など常連の姿もありますが、3大会ぶりのスウェーデン (Sweden) や、7大会ぶりのエジプト (Egypt) 、9大会ぶりのペルー (Peru) といったチームも見られます。日本代表はグループHで、ポーランド (Poland)セネガル (Senegal)コロンビア (Colombia) と総当りのリーグ戦に臨みます。

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