これを英語で書けますか? 世界各国の名称 (1) 西欧諸国編

Map of Europe

新聞の「国際」面や、ネットの新聞社のサイトやニュースポータルの「国際」のコーナーをちょっと見てみましょう。世界のいろいろな国についてのニュースがありますね。

北朝鮮について、アメリカは何をどうするつもりでしょうか。2011年以降、独裁政権に対する民主化要求運動が内戦化し、非常に悲惨な状況になっているシリア情勢も緊迫の度を増すばかりです。貿易をめぐるアメリカと中国の緊張関係も目が離せません。自衛隊の日報をめぐる報道で、自衛隊が派遣されていた南スーダンイラクの名前が再度、毎日のニュースに出てくるようになっています。

そうそう、6月からサッカーのワールドカップがロシアで開催されますが、前回、2014年の大会は南米のサッカー王国、ブラジルで行われたのでしたね。ブラジル大会で3位になったオランダは、ロシア大会では出場権を逃しました。ロシア大会に出ないヨーロッパのサッカー大国としては、ブラジル大会でまさかのグループリーグ敗退を喫したイタリアも忘れてはいけませんね。また、前回大会でグループリーグを調子よく突破してトーナメントに進んだものの、開催国ブラジルを相手にPK戦で惜敗したチリも、今年の大会で見ることはできません。前回優勝国ドイツをはじめ、スペインフランスアルゼンチンメキシコなど常連の姿もありますが、3大会ぶりのスウェーデンや、7大会ぶりのエジプト、9大会ぶりのペルーといったチームも見られます。日本代表はグループHで、ポーランドセネガルコロンビアと総当りのリーグ戦に臨みます。

さて、ここまで意味ありげに太字にしてきた諸外国の国名や地域名。みなさん、これを英語で書けますか?

国公立大の二次試験や難関私立大学の自由英作文・和文英訳をはじめとする英作文問題では、単なる「英語力」とはまた別の、「一般常識力」とも呼ぶべき力が少し問われることになりますが、その対策として意外と重要であるにもかかわらず、案外積み残しがちなのが、国名・地域名の英語表記です。今回から、何回かに分けてその話をしていくことにしましょう。おやつでも食べながら、リラックスして読んでいってください。まずは西ヨーロッパ(西欧)諸国から。

案外書けない? 「一般常識」として知ってる(はずの)国の名前

広い世の中にはときどき「クイズ王」のような人がいます。他の人たちがほとんど知らないような国名と首都名をすらすらと暗誦できるような人です。そういった人たちの知識には心底敬服しますが、このコラムで扱うのはそういった、ある意味「極めた」人々のレベルでないと共有されていないような知識ではなく、もっと広く一般に共有されている「一般常識」的な知識です。「アメリカ(アメリカ合衆国、米国)」という国名を知らない人はまずいません。「中国」や「イギリス(英国)」、「フランス」、「ブラジル」などもそうでしょう。

では、そういった国の名前を、英語で書けるでしょうか?

ドイツ、イタリアなどは、英語ではなく現地語に由来した言い方

Map of Europe
日本語でカタカナになっている外来語は、ついつい英語由来なような気がしてしまいがちですが、実は江戸時代に鎖国される前に関係があったポルトガルやオランダのような英語圏以外の国から入ってきた語もたくさんあります。

例えば「パン」はポルトガル語由来ですから、英語圏で More pan, please. と言っても通じません(実際にことばを用いるときには文脈・社会的文脈というものがあるので、それから外れた解釈をされることはなく単に通じないのですが、機械翻訳では英語でのpanと解釈され、「もっと多くの鍋を頼みます」などと訳出されるかもしれません)。「ピンセット」はオランダ語由来ですから、I need a pincet. と言っても通じません(英語では「挟むもの」ということで、tweezersと言います)。

世界の多様な言語

ヨーロッパの、アルファベットを用いて横書きにする言語は、俗に、日本語で「横文字」と呼ばれます。言うまでもないことですが、それらの言語には英語以外に数多くの言語があります。フランスではフランス語が話されていますし、ドイツではドイツ語、イタリアではイタリア語、スイスでは……ええと、スイスは少々ややこしくて「スイス語」というものはなく、ドイツ語とイタリア語とフランス語、そしてロマンシュ語という少数言語の4つのことばが公用語に定められています(それぞれの言語で国名の表記も異なります)。

これらの多様な言語を持つヨーロッパ諸国は、かつて世界各地に植民地をもうけ、自国語を各地に広めました。スペインから遠く離れたアルゼンチンやチリ、キューバでスペイン語が話されているのは、それらの国々がかつてスペインの支配下にあったからです。同様に、アルジェリアやセネガルでフランス語が使われるのは、フランスの植民地だったからです(サッカーでかつてアルジェリア代表の監督をつとめていたハリルホジッチ前日本代表監督は、旧ユーゴスラヴィア出身でフランス在住のかたですが、日本でもフランス語を使っていましたね)。アジアでは、ベトナムがかつてフランスの支配を受けていたので、その時代を知る人たちやエリートの中にはフランス語を使える人もいます。

むろん、それらかつての植民地には、その土地で元々話されてきた現地語もあります。世界の言語は本当に多様です。ですがここでは、日本語にカタカナ語として入ってきていることばだけに注目します。

ヨーロッパ諸国の国名1. ドイツ Germany

ヨーロッパ連合(EU)の中心国で、中国、米国に続いて世界第3位の輸出国(2016年)であるドイツ。日本語の「ドイツ」は、ドイツ語のDeutschlandに由来する言い方で、英語ではGermany, 「ドイツ」とはかけ離れた発音をします(発音は、リンク先のWeblio英和辞典などでご確認ください。PCでもスマホでも音声再生のアイコンをクリック/タップすればOKです。以下同)。

英語での形容詞・名詞形(以下、単に「形容詞形」と書きます)は、German(「ドイツの; ドイツ人、ドイツ語」)。ちなみに首都はBerlinで、これもドイツ語由来のカタカナの音と、英語での発音が全然違います(スペルは同じです)。

ヨーロッパ諸国の国名2. フランス France

エッフェル塔とパリの街
同じくEUの中心国のフランス。芸術、ファッションや食文化で圧倒的と言ってもよいような存在感のある国ですね。英語という言語 (English) の祖国であるイングランド (England) との歴史的な関係も深く、共通する語彙もたくさんあります(かつてイングランドで、フランス語は支配階級のことばだったので、政治に関する語にはフランス語由来の借用語が多く入っています)。「フランス」という名称も、英語でもフランス語でも同じ綴りで、Franceです(発音もだいたい同じ)。

ただし、形容詞形は英語とフランス語では異なります。英語ではFrench(「フランスの; フランス人、フランス語」)ですが、フランス語ではfrançaisまたはfrançaiseと書きます(両者の違いは、後述のイタリア語と同じ、〈男性〉か〈女性〉かです)。首都のParisは、フランス語では最後のsは発音しませんが(日本語の「パリ」という音はフランス語由来)、英語では発音するので「パリス」というように聞こえます。

ヨーロッパ諸国の国名3. イタリア Italy

イタリアの食材
ヨーロッパの食文化と言えば外せないのがイタリア。日本語でのこの名称はイタリア語のItaliaに基づいていますが、英語ではItaly(発音も要注意です。アクセントに気をつけましょう)。日本語でも少し古い言い方で「イタリー」というのがありますが、そちらが英語由来のようですね。

受験生のみなさんの答案を見ていると、このItalyという単語が書けていないことが案外多くあります。英語の文章であるにも関わらず、イタリア語の単語でItaliaと書いていたり(実際のコミュニケーションで通じるか通じないかで言えば通じるはずですが、試験では「スペルミス」、「誤記」と判断されて減点対象になってしまいます)、さらにはL(エル)ではなくR(アール)を使っていたりで(ああ、日本人!)、「意外とうろ覚えになってるままの単語」について調査したら、Italyは上位に食い込むのではないかと思うほどです。「イタリア」くらいは、英語圏でもだれでも知ってて当たり前の固有名詞で、試験で書くことを求められる範囲の単語ですから、しっかり書けるようにしておきましょう。

英語での形容詞形はItalian(「イタリアの; イタリア人、イタリア語」)。イタリア語では〈男性形〉〈女性形〉という英語にはないものがあってItalianoとItalianaを正確に使い分けなければなりませんが(その上、Italianiという形もあります!形容詞の語形変化がない英語は、ヨーロッパの言語の中では、実は単純なんですよ)、英語では気にしなくて大丈夫。首都の「ローマ」は、日本語の語彙にも「ローマ字」のように完全に組み込まれている固有名詞ですね。この発音はイタリア語のRoma由来で、英語では語尾の綴りと発音が微妙に違って、Romeです。When in Rome, do as the Romans do.(「ローマにいるときは、ローマ人が行動するようにせよ」、つまり「郷に入りては郷に従え」 )ということわざも、受験生にとって〈常識〉の範囲内です。

以上、ドイツ、フランス、イタリアの3カ国は、形容詞形や首都名も含め、しっかり書けるようにしておきましょう。

ヨーロッパ諸国の国名4. スペイン、ポルトガル、オランダ、スイス、ギリシャ……ヨーロッパ

空港案内板表示
さて、以下は駆け足で見ていきます。

スペインSpainと綴ります。形容詞形はSpanishです。現在の日本での呼び方は英語由来ですが、江戸時代までは、スペイン語のEspañaに基づいた「イスパニア」という呼び方がされていましたね。スペインから直接、宣教師や商人が日本に来ていたという歴史的な経緯によることです。スペイン語は旧植民地の南米諸国など多くの国で公用語・第一言語として使われています。アメリカ合衆国にもスペイン語話者は多くいますね。それは南北アメリカ大陸の人の行き来を背景とすることです。

同じく、日本とのつながりがあったポルトガルは、英語ではPortugalと綴り(このスペルは現地語でも同じです)、形容詞形はPortugueseとなります。ポルトガル語は2億人もの人口を抱えるブラジルの公用語であるほか、アフリカのいくつかの国でも公用語となっています。

日本での「蘭学」という表現の語源となったオランダは、一筋縄ではいかないのですが、英語ではthe Netherlandsで、形容詞形になるとDutch――このへんは、深く考えないほうがよいですが、由来が気になったらウィキペディアをチェックしてみてください。英語では、この名称は必ずしも書ける必要はないかもしれませんが、読んだときに「オランダのことだ」とわかるようにしておきましょう。ちなみに日本での呼称は、ポルトガル人宣教師がもたらしたHolandaという呼称を元にしているそうです。

それからスイスは、上で述べた現地のことばの4言語で呼称が異なるという国名ですが(詳しくはウィキペディアを参照してください)、英語ではSwitzerlandと言います。日本で童謡として知られる『おおブレネリ』の歌詞に出てくる「スイッツァランド」は、英語での呼称に基づいて日本での訳詞に取り入れられたものです。形容詞形はSwissですが、スイスの場合、既に述べたように「スイス語」というものは存在しないので、その意味は「スイスの」、「スイス人(の)」だけです。

現在のヨーロッパ文明の源流といえるギリシャ(ギリシア)は、英語ではGreeceで、形容詞形はGreek。ギリシャの文字は、ラテン文字(アルファベット)とは異なり、英語圏の人は書かれているものを見てもさっぱりわからないので、英語の慣用表現で「ちんぷんかんぷんである」ことを、“It’s all Greek to me.” と言うことがあります(日本語話者はあまり使う機会はないかもしれない表現ですが)。

そうそう、「ヨーロッパ(欧州)」はEuropeで、形容詞形はEuropean, イギリスの離脱で揺れに揺れている「欧州連合」はthe European Unionで、その省略形がEUです。

まとめ:国名・地域名は、覚えることが必須

他の語彙なら、単語を知らなかったりど忘れしてしまったりしても、言い換えを工夫すればある程度は対応することが可能ですが、固有名詞は知らなければ(書けなければ)どうにもなりません。試験に出たときに、苦し紛れで何とかそれらしいものを書いてみたところで、間違ってしまえば減点対象になってしまいます。読解でもDutchを「ドイツの」と誤読してしまえば、得点を失う原因にもなります。

そのようなことを避けるためにも、普段から、「知ってて当たり前」「書けて当然」と思われる国名は、英語での綴りを確認し、基本的なものは書けるようにしておきましょう。

次回からは、英語圏各国を見ていきます(6月掲載予定)。

 

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