大学入試においての現代文の読解は、簡単な人にとっては特に対策せずともセンターぐらいならば8割は取れてしまうし、色々な参考書の解法を読んでも、なかなかうまくいかない人にとっては大きな関門の一つになります。根本的には、きちんと現代文においても精読のスキルを習得していくべきですが、この項ではまずは意外と盲点になりがちな「現代文の語彙」について確認しながら、学習のためのオススメの参考書の使い方を見ていきたいと思います。
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現代文も語学の1つ。まずは単語=語彙のチェックをしよう
英語の読解を学習するにあたり、私たちは単語学習やイディオム学習の重要性を強く認識させられています。なぜならば、言葉がわからないと、当然にそこに書かれている文章も読みづらくなるからです。この原理原則は日本語で書かれている文章においても同様です。
まずこちらの言葉をご覧ください。2017年度のセンター試験の現代文で使われていた言葉の一部です。問題になっているところ以外から抜粋しています。脚注のある言葉はのぞいています。
「あてつけがましい」「避暑に行く」「朝夕の立ち居の間」「一枚岩」「膾炙」「ヒトゲノム計画」「処方箋」「無謬」「思弁的」
どうでしょうか。これらの言葉は、なんとなく文脈に置かれればわかるような気もするし、ではどういう意味、と言われると自分の言葉で言いにくいものもあるのではないでしょうか。別にこれらを全てきちんと知らないと文が読めないわけではありません。しかし、知っていた方がスムーズに読めるのは間違いありません。
他方で現代文の単語学習で大事なことは、難しい言葉をたくさん知ることではありません。例えば、上記にあげた「膾炙」などという言葉を知っている必要があるかといえば、それは必要ないでしょう。しかし、「一枚岩」という言葉は知っておくべきですし、「思弁的」なんていう頻出の言葉はどんな風に使われるのか、しっかりと認識しておきたいところです。
知っているようで、実はしっかりとは知っていない。そういう言葉を減らそう
日本語の言葉は日頃目にしているだけに、割と素通りしていがちです。しかし、いざこれはどういう意味か、問われると実はしっかり知っているのは自分が普段使っている言葉ぐらい、ということが多いです。
例えば「グローバリゼーション」というのはよく耳にしますし、入試の論説文などでもよく見る言葉です。でも、じゃあグローバリゼーションって何?と言われると、「これ!」と的確に答えるのは難しかったりします。特に、「国際化」との違いを端的に認識できているかどうか、と言われるとなかなか難しいところです。
そのような、知っているようで実はしっかりとは知っていない重要な言葉、をきちんとまず抑えていくことが現代文読解のためには重要です。
現代文参考書の鉄板。「現代文単語」の使い方
このような観点でのお勧めの参考書が、桐原書店から出ている鉄板中の鉄板、「現代文単語」です。この参考書の特徴は、1)奇異をてらった単語はない 2)外来語が充実している 3)用例がしっかりしている 4)言葉の関連性をしっかり説明してくれている というところになります。まずはこの参考書を使った現代文の単語学習について確認をしていきましょう。
1、2章は読み物として熟読しよう
1、2章で扱われている言葉は、大学受験をする高校生ならば、文系とか理系とかの垣根なく、すべての人が知っておきたい言葉になります。1つ1つの言葉は聞いたことのない言葉はないはずです。例えば、「主観」と「客観」などについては、聞いたことのない人はいません。しかし、この2つの言葉の厳密な違い、ということになるとなかなか難しいところです。さらに、では、「主体的」のような言葉との関連性などについて聞かれると困ることも多いのではないでしょうか。
ここの学習で大事なのは、この言葉の「用例」「関連語」そして、左側のページの2つの言葉の関連性の図解と解説を、しっかりと読んでほしい、ということです。言葉を一語一義で覚えるのは意味がありません。どのような文脈で使われるのか、どのような言葉と一緒に使われるのか、という流れをお送り「体験」しておくことが大事です。言葉は生き物です。
常に文脈の中で生きた役割を持っています。その役割の解説を読み重ねていくことが重要です。
この章については言葉の意味を知るというよりも、「読み物」として熟読してほしいところです。
3、4章は用例を大事にしていこう
3、4章は大学入試用らしい言葉が並びます。特に3章の外来語系のところは、知っておくと特になることが多いです。ここの学習で大事なのは、用例を必ずチェックしておくこと、です。エートス、という言葉を「持続的な性格」という一義で覚えるのもいいのですが、大概は記憶に残りません。
それよりも「神秘の一端に触れることによって安心を得ようとするのが、日本の庶民の変わらないエートスなのです」という言葉の流れをしっかり体験しておくことが重要です。
繰り返して読もう。問題は解かなくてもいい
この参考書には問題も付属しているのですが、もちろん取り組んでほしいですが、極論問題はやらなくてもいいです。それよりも、用例と解説を繰り返し読んでおくことの方が重要です。そして、英単語と同様に、まとまって一気にやるのではなくて、空いた時間の5分、10分を上手に利用して、隙間時間で学習を進めたいところです。言葉ばかりを1時間も勉強したりしていると、ぐったりしてしまいますので。
現代文の学習にも電子辞書を活用しよう
少し話はそれますが、英語の学習のお供に電子辞書を使っている人は多いと思うのですが、同様に現代文の学習においても是非とも電子辞書、あるいはスマホの辞書をお供にしてほしいです。ただ、スマホの辞書機能だとほとんどが、言葉に対して簡単な意味が載っているだけ(無料のサイトだと)なので、用例や類義語なども含めて調べた時の情報量を鑑みると、まだ電子辞書の方が優れいてることが多いでしょう。
英語の文を読むときに、わからない言葉あるとそれを辞書で調べると思うのですが、現代文の時も同様に、読んでいるときに「気になる言葉」にチェックをしておいて、問題を解き終わり、答え合わせをして解説を読んだ後に、是非ともチェックした言葉を調べてみてほしいです。問題を解く最中に確認してしまうとちょっと支障があるので、言葉チェックは問題を解き終わった後で。地味なところですが、これを1年間繰り返せば、おそらく問題を解くのに言葉の意味に困る、ということはほぼ0に近くになります。
単語がわかれば文章がわかる、は語学に共通
こうして見てきますと、現代文における単語や言葉の取り組みと、英語にそれや、古文における単語と文章の関係はいずれも同じです。語学の学習には発音、綴り、単語、文法と来て文章の学習があるわけですが、どんな語学であろうとも、最終的には「語彙の豊富さ」が文章を読む上では重要なキーワードになって来ます。
現代文の学習ではここがどうしてもおざなりになりがちです。漢字や熟語などの一問一答のような練習はするけれど、文脈の中での言葉の意味の学習は、英語のようにきちんとしている人はあまりおおくありません。しかし、現代文の読解は高度な読解力を試します。ということは、そこに求められる語彙力も、「幅広さ」とともに「深さ」を求められます。表面的に言葉を知っているという状態ではなくて、生きた良文の中でのことばをにんしきする、という練習は高いレベルの読解演習の前提となる知識、と言っていいでしょう。
まとめ
現代文の学習では、まず何から取り組んだらいいのだろう、というところで悩むことが多いと思います。◯◯式、とか読解の取り組み方についてはたくさんの参考書があります。自分のレベル感にあったものからスタートすればいいのですが、まず取り掛かりとして迷うようならば、是非、語彙力を高める単語学習から取り組んで見て下さい。今回は「現代文単語」をご紹介しましたが、単語をしっかりと学習し直すことは、現代文のみならず、英語や他教科の理解促進にも役立ちます。