音楽ビデオで、英語リスニングの練習を……実践編 (2) ニルヴァーナ、ザ・ホワイト・ストライプスなどで母音の聞き取り

Photo: Baby Nirvana by Tim Cigelske (CC BY-SA 2.0)

YouTubeにアップされている音楽(洋楽)ビデオを見ながら歌詞を聴くことで、英語を「聞いてわかる」能力をつけるための練習をしようという主旨のコラム、前回はアリアナ・グランデやジャスティン・ビーバーのリリック・ビデオ(歌詞を表示することがメインの音楽ビデオ)をはじめ、セレーナ・ゴメス、クリーン・バンディットなどポップスの楽曲と、ディズニー映画『アナと雪の女王』の劇中歌を見てきました。

現段階では「音に慣れる」ことがメインの目的なので、それぞれ歌詞の意味については特に詳しい解説をしていませんが、余裕がある人は、気に入った(あるいは気になった)曲があったら、歌詞の和訳にも挑戦してみると一石二鳥になるでしょう。

ただし、日本語の歌でもそうですが、歌詞というものははっきりした〈意味〉を伝えるというより、〈イメージ〉を描いたり〈音の響き〉を楽しむことを重視していることが多いので、〈意味〉は明確でないこともあるかもしれません。また、有名な曲はネット上にファンの人が作成した和訳がアップされていることもありますが、「読みづらい直訳か、かみ砕いた意訳か」以前に、正確な和訳とは言いがたいもの(誤訳しているもの)もありますので、注意が必要です。

なお、「意訳」というのは「日本語では不自然なところを自然に響くようにする」ことで「原文が言っていないことを勝手に解釈して言葉にする」ことではありません。例を挙げると、His illness prevented him from going out. は「彼の病気が彼が外出することを妨げた」が〈直訳〉、「彼は病気のため、外出できなかった」、「彼が外出できなかったのは病気のせいだ」が〈意訳〉で、「彼は外出できないという病気にかかった」は〈誤訳〉です。

さて、前置きが少々長くなりましたが、今回はロック系の楽曲を取り上げていきます。

いずれも、最初のうちは歌詞を文字で見ながら聞き、慣れてきたら文字を見ずに音だけで聞き取るように意識してがんばってみましょう。

英語の特徴的な母音のひとつ、〈appleの「ア」〉に注意して聞いてみよう

REM – Stand

では今日の1曲目。1980年にアメリカのジョージア州で結成され、2011年まで活動していたR.E.M. というバンドが1988年にリリースしたStandという曲です。ビデオはバンドの公式チャンネルにアップされているものですが、歌詞が表示されないので、「準備編」の記事で解説した通り、外部サイトで歌詞を検索してください。

なかなか強烈な、というか、とてもはっきりしたアメリカ英語の音で、テンポもゆっくり目なので、母音の特徴がよくわかります。繰り返しの多い歌詞なので、曲を一度聞くだけで同じ単語・フレーズが何度も確認できます。

リスニングのポイントとしては、まず、曲名にもなっているstandの “a” の音。これは〈appleの「ア」〉などと説明されますが、「ア」と「エ」が合わさったような音ですね。「口を『エ』の形にして『ア』と言う」という(最初は口がつりそうになる)練習をさせられた人も多いのではないでしょうか。発音記号は、メモ帳に手書きしたので少々見づらいかもしれませんが、次の写真を参照。[a] と [e] をくっつけた字です。

a_in_stand

曲名になっている “stand” という単語は何度も繰り返し出てきますし、他にも “haven’t”, “carry” といった単語が歌詞の中に出てくるので、どういう音なのかを把握するつもりで最後まで集中して聞いてみましょう。

余裕のある人は、他の母音にも注目してみましょう。特にはっきりしているのは次の3つの音です。(「二重母音」については、本稿のあとの方で少し詳しく説明してあります。)
  - place, face: 「エイ」の二重母音
  - about, ground, around: 「アウ」の二重母音
  - wonder, sun: わりとはっきりした「ア」の音

個別の母音の音だけでなく、単語と単語のつながりも聞き所です。歌い出しの部分(0:10から)で、”Stand in the place where you live” の下線部は、歌詞を文字で見ればそう聞こえても、文字を見ていないと1語のように聞こえるという人が多いのではないでしょうか。続いて “Think about direction, wonder why you haven’t before” も同様に単語と単語のつながりの滑らかさが注目ポイントです。

0:36から、および1:03、それから2:06からの “Your feet / are going / to be on the ground” のリズムに乗ったつながりの箇所は、シャドーイング(耳から入ってきたものをそのまま口にしてみるという練習)に最適です。

R.E.M. というバンドはシリアスな歌詞で重い感じの曲が多かったのですが、このStandという曲は「たまにははじけてみてもおもしろいんじゃない」的に書いたという明るい曲で、歌詞は当人たちが「思いっきりバカバカしい感じ」と語っている通り、言葉の裏の意味を読み取る必要のない単純明快なものです。作曲時には1960年代の「バブルガム・ポップ」と呼ばれたやたらと陽気な楽曲(当時のプロデューサーが「風船ガムが大好きなティーンエイジャー向けの音楽を作ろう」と考えたことから、このように呼ばれます)が念頭にあったそうで、ビデオもみんな楽しげにぴょんぴょん跳ねて踊っていますね。聞いているこちらの体も知らず知らずのうちに動いてしまいます。

Nirvana – Come As You Are

続いて2曲目も「ア」と「エ」が合わさった〈appleの「ア」〉が中心ですが、この音と、わりとはっきりした〈sunの「ア」〉の違いがわかる曲です。これもバンド公式チャンネルのビデオですが、歌詞が表示されないので、「準備編」を参照して、外部サイトで検索してください。

※バンド公式のビデオはアルバムの音源そのままなのですが、ドラムがどんじゃかどんじゃかとやかましくて耳が痛いとか歌詞の聞き取りがつらいという方は、下記のアンプラグド・ライヴの映像でお試しください。

リスニングのポイントとしては、まず、何度も繰り返し出てくる “as” の「ア」の音。先ほど見たR.E.M. の曲でもポイントになっていた〈appleの「ア」〉です。

これと対比される〈sunの「ア」〉も、”come”, “mud”, “gun” という単語で確認できます。発音記号は「V」が上下逆になったような形で表されます(下記写真を参照してください)。

o_in_come

曲名のCome As You Areは、「いつも通りのあなたで来てください」という意味。パーティーなどで「正装・盛装ではなく普段着で出席してください」というときに使われ、そこから転じてcome-as-you-areとハイフンで連結することによって「気心の知れた仲間内での」という意味の形容詞にもなります。

この曲の主、Nirvanaはアメリカの北西部の都市シアトルのバンド。本人たちも特に売れるとは思っていなかったのに突然世界規模でバカ売れしてしまい、ヴォーカル/ギターのカート・コバーン(姓は実際には「コベイン」と発音されます)がいろいろついていけなくなって、1994年4月に悲劇的な死を選んだために消滅してしまった伝説のバンドです。「グランジ」という音楽のジャンルができたのはこのバンドが売れたことがきっかけです。また「オルタナティヴ・ロック alternative rock」は、現在は普通に音楽のジャンルを言う表現として定着していますが、元々は1990年代初めに、ある程度コアな音楽好きにしかウケなさそうな音楽性のNirvanaがバカ売れして、世界各地の音楽フェスでトリを飾るようなバンドになったときに、「従来のメインストリーム(主流)」(ボン・ジョヴィ、ガンズ・アンド・ローゼズなどチャート上位常連のロック音楽)に対し、「もうひとつ (alternative) の流れ」が産業として成り立つ規模のリスナーを集めるようになった、という文脈で広く使われるようになった用語です。2018年の夏はNirvanaのリバイバルが来ていたようで、街中でこのバンドのTシャツを着た人をよく見かけました。筆者個人も90年代当時のを今も持っています。

Photo: Baby Nirvana by Tim Cigelske (CC BY-SA 2.0)

Photo: Baby Nirvana by Tim Cigelske (CC BY-SA 2.0)

ちなみにバンド名は日本語では元々のサンスクリット語に近い音で「ニルヴァーナ」と言いますが、英語では「ナヴァーナ」のような音です(Nirvanaのirは、birdやgirlのirの音として発音される)。

ドラマーのデイヴ・グロールは、Nirvanaが終わったあとはギター/ヴォーカルとして自身のバンドFoo Fightersをスタートさせ、その後20年以上にわたって第一線で活躍し続けています。Foo Fightersの曲も1曲、聞いておきましょう(これは聞き取りはほぼ無理ですから、単に音楽として楽しんでください)。

The White Stripes – Seven Nation Army

英語の特徴的な母音のひとつ、〈appleの「ア」〉に注意して聞いてみる練習の締めくくり。1990年代末から2011年まで活動していたドラムとギター/ボーカルの2人組、The White Stripesの曲です。レコードレーベルの公式チャンネルにアップされている映像で、字幕(CC)が出るように設定はされているのですが、筆者が確認した時点では何も出ません(音声認識がされていないのかもしれません)。みなさんがこのコラムをお読みになっているときも字幕が出ないようなら、ここまでの2曲と同じく、「準備編」を参照して外部サイトで見つけてください。

この曲は2018年サッカーワールドカップの大会でも選手入場曲として使われ、スタジアムが一体となって歌っている光景が中継されていましたね(詳しい解説はこちら)。

0:22あたりの “A seven nation army couldn’t hold me back“, 0:28あたりの “Taking their time right behind my back“, 0:40の “Back and forth through my mind” に神経を集中させてみましょう。

そのあとは、英語としての滑らかさ(”hear about it”, “I’m gonna serve it to you” の単語と単語のつながりなど)に気をつけながら、歌詞を目で追ってみてください。余裕がある人はシャドーイングをするとよいでしょう。

音楽では非常に豊かな歴史を持つデトロイト出身のThe White Stripesは、「姉と弟による2人組」という設定になっていて(実際は姉弟ではありませんが)、いろいろと飽和状態にあったロック音楽からそぎ落とせるだけそぎ落として、なおかつ、やかましくて濃度の高いロックをやるということに成功したバンドのひとつです。2003年のElephantというアルバムから最初にシングルカットされたこの曲は、商業的にはこのバンド最大のヒット作となりました。シングルだけでなくアルバムも大ヒットし、グラミー賞も受賞しています。2018年の現在、ギタリストとして活躍している20代のミュージシャンの中には、10代のころ、この曲のリフで練習していた人が大勢いるのではないでしょうか。

〈あいまい母音(birdの「アー」)〉に注意して聞いてみよう

The Byrds – Turn! Turn! Turn! (To Everything There Is A Season)

やかましい音が続いたので、少し静か目なのを聞きましょう。1960年代の「フォーク・ロック」と言えばこのバンド、The Byrds (“the birds” と同じ発音) が、フォーク・シンガーのピート・シーガーが1950年代に書いた曲を演奏して大ヒットしました。日本でもCMなどで使われていたことがあるので、聞き覚えがある方もいらっしゃることでしょう。歌詞はYouTubeのビデオでは表示されないので、「準備編」を参照して外部サイトで検索してください。

この曲は、何度も繰り返される “turn” や “purpose” という単語に含まれている〈あいまい母音の「アー」〉に注目してみましょう。

〈あいまい母音の「アー」〉は、bird, girl, work, pearlといった単語に含まれている、はっきりしない「アー」の音です。というか、「アー」というより「ウー」かもしれません。口の周囲の筋肉のどれも力を抜いて、口の中では舌をどこにもつけず宙に浮かせて声を出します。ちょうど、「あ~、だるい」とか「あ~、眠い」と言うときの、脱力した「あ~」の感じです(「あー、びっくりした!」の「あー」や、「ああ、わかった!」の「ああ」ではなく)。私たちは「あ~」として認識しているこの音は、実際には「あ~」とも「う~」ともつかない、モゴっとしたあいまいな音(あいまい母音)です。

ちなみに、これを長く伸ばさずに言う音は、英語では最もよく使われる母音です。語強勢(アクセント)のない母音はこの音になる傾向があるからです。例えばexaminationのmiの音は、カタカナで表記するときは「ミ」になりますが(「エグザネーション」)、実際にはこの母音は〈あいまい母音〉で、モゴっと発音されるだけで、はっきりと「イ」の音が出されるわけではありません。とりあえず口を開けて音だけ出すか、というような音です。この音は、やや専門的な用語で「シュワー schwa」と呼びます。この音が「徹頭徹尾あいまいな音」で、「カタカナでは表せない(が、便宜的に『エ』や『イ』や『ア』で表している)音」であること、語強勢のない母音はこの音になってしまうことが多いことを認識しておくと、リスニングもスピーキングもかなり楽になります。

The Byrdsのこの曲は1965年にリリースされました。ヴェトナム戦争が泥沼化しつつある中、”A time to kill, a time to heal”, “A time of love, a time of hate”, “A time of war, a time of peace” と歌うこの曲は、非常に多くの人々の共感を呼びました。ただしこの歌詞は、曲を書いたピート・シーガーのオリジナルではなく、17世紀初頭にイングランド王ジェームズ1世が作成させた聖書の英訳版(「欽定訳聖書」と呼ばれます)の一節(旧約聖書の「コヘレトの言葉」、第3章)をほぼそのまま使ったものです。聖書とはいえ、特に宗教的な感じはない一節で、「殺す/癒す」、「愛する/憎悪する」、「戦争/平和」のほか、「種をまく/刈り取る」、「笑う/泣く」、「得る/失う」など、人間の世の中の言葉の〈対比〉が全編にわたって続いています。「移り変わり」をいうこれらの言葉は、聖書にはなじみのない私たちにも響く、普遍的な言葉です。

二重母音に注意して聞いてみよう

英語の母音の種類

英語の母音には、大きく分けて「短母音」「長母音」「二重母音」の3種類があります。

「短母音」は単純な母音で、「pen ペン」のように、あえてカタカナで書いたときにカタカナ1文字で済むもの(ただし「nut ナット」のように小さい「ツ」が入ることもあれば、「cat キャット」のように小さい「ヤ」と「ツ」が入ることもあります)。

「長母音」は長く伸ばす母音で、日本語の表記では「ー」(音引き)をつけます。例えば「sort ソート」、「walk ウォーク」、「dirt ダート」、「mark マーク」など。

「二重母音」は母音が2つ連続してひとつのまとまりになっているもの。「town タウン」の「アウ」や、「high ハイ」の「アイ」、「tour トゥア」の「ウア」、「pair ペア」の「エア」、「hear ヒア」の「イア」、「choice チョイス」の「オイ」といった音です。二重母音は、連続する音によっては日本語の表記では「ー」(音引き)で表されることも多いのですが、実際には単に伸ばしているのではなく別の音が続けられているということに注意です。例えば「break ブレイク」(△ブレーク)、「face フェイス」(△フェース)、「note ノウト」(△ノート)など。

実はこのほかに三重母音もあるのですが(「fire ファイア」の「アイア」、「hour アウアー」の「アウア」)、数が少ないので、リスニングに際してはあまり気にしなくてもよいでしょう。重要なのは「短母音」「長母音」「二重母音」です。これを知っておくこと、意識しておくことは、リスニングの上達に不可欠です。

Oasis – Wonderwall

……と、前置きが長くなりましたが、今日最後の音楽ビデオを見てみましょう。「エイ」、「アウ」、「アイ」といった二重母音に注意して聞いてみてください。イギリスのバンドOasisによる1995年のヒット曲で、2000年代以降も、日本のテレビでもときどき流れていると思います。歌っているリアム・ギャラガーは「はきはきした棒読み」にも近いスタイルで、非常にはっきりと母音を発音しています。歌詞はビデオには表示されないので、「準備編」の手順で検索してください。

歌の1番(2:06まで)に出てくる単語で二重母音のものを拾うと、下記のようになります。
  - 「エイ」: Today, day, way, say, maybe, saves
  - 「オウ」: throw, roads, know
  - 「アウ」: now, somehow, about, out, doubt, how
  - 「ウア」: sure
  - 「アイ」: winding, lights, blinding, like

このほか、backの〈appleの「ア」〉や、wordの〈あいまいな「アー」〉にも注意して、歌詞を見ながら聞いてみてください。

また、”Backbeat, the word is on the street” の部分での「イート」の音の繰り返しや、”And all the lights that lead us there are blinding” の部分での「L」音および「アイ」の二重母音の繰り返しも、非常に英語らしい表現です(これをさらに先鋭化させると、ラップの「韻」になります)。

まとめ

音楽なので、音だけ聞いて楽しんでいてももちろんよいのですが、どうせなら勉強にも取り入れてみようという主旨で、本コラムは執筆しています。

それでも結局、音楽だけで「かっこいいなあ」「いい曲だなあ」「これが伝説のあれか」という感想で終わってしまうこともあるかもしれません。そのような場合でも、何かひとつでもふたつでも―― standの “a” の音でも、”come as a friend” の “come” と “as” の音でも、”there’s a season, turn, turn, turn” の “turn” の音でも、”Today is gonna be the day” の [ei] の音の繰り返しでも――「英語の音」として耳に残ってくれたらいいなと思います。

今回、R.E.M,, Nirvana, the White Stripes, the Byrdsとアメリカのバンドを見てきて、最後にイギリスのOasisを聞きました。次回はイギリス英語の音について、ブリティッシュ・ロック満載でお届けしましょう。

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