英語という科目で試験での得点力を上げるために必要なのは、語彙力や文法力、読解や英作文・和文英訳や英文和訳などといった分野の能力強化だけではありません。案外見過ごされがちですが、英語の「書き方」も、失点を防ぐという点で重要です。
先週の当コラムでは「アルファベットという文字の書き方」について説明しましたが、今回は「パンクチュエーション」のルールについて、解説しましょう。
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「パンクチュエーション (punctuation)」とは
記述式試験で英作文の答案を採点する際、文法や使用語彙に問題がなくても、マイナス1点の減点をせざるを得ないポイントがいくつかあります。
その筆頭格が単語のスペルミスです。「少なくとも」と言いたくて “at least” と書くはずが、”at leest” となっていたら減点です。ただ、スペルミスが減点につながることはだれでもわかっていますし、みなさんも、「そういう失点を防ぐために、答案は提出前に慎重に見直しをしなさい」と、うざいと思うほどしつこく言われていると思います。
それほど強く言われていないのが、パンクチュエーションです。
パンクチュエーション (punctuation) は「句読法」という意味です。その「句読法」とは何か、ということからわかりづらいかもしれませんね。
日本語でも、句点(。)や読点(、)、カギカッコ(「」)や三点リーダー(…)など、文字以外の記号の使い方には約束事(ルール)があります。そういう約束事を「句読法」と言います。
英語の場合は、ピリオド ( . )、コンマ ( , )、引用符 (” “)、セミコロン ( ; )、コロン ( : ) といった記号類を使いますが、それぞれに使い方のルールがあります。
(なお、「コンマ」は「カンマ」という呼び方もありますが、ここでは「コンマ」に統一します。前者はイギリス系、後者はアメリカ系の発音で、どちらも同じ comma のことです。)
正しく使えていない答案は、減点されるかも
このルールを教わる機会はあまり多くはありません。何となく授業で言われてはいても、「ルール」としてはっきり教わっていないという人が多いのではないかと思います。
しかしこれが、私大入試や国公立二次の記述式試験では、間違い1箇所につきマイナス1点の減点となる可能性がある、大きなポイントなのです。
それゆえ、変なところで失点しない答案を作成することが第一となる入試では、「たかが句読点」とあなどらず、基本をしっかり押さえておくことが重要になってくるのです。
では、以下でそれぞれの記号について基本を確認していきましょう。今回は「ピリオド」と「コンマ」を取り上げます。
ピリオド ( . )
ピリオドの基本的な用法
ピリオド (period; または「フルストップ full stop」) の第一の用法は、文が終わったことを示す記号としての用法です。日本語の句点(。)とだいたい同じという感覚で大丈夫です。
例文:
I like cats.
(私は猫が好きです)Edward and John, who are brothers, are from London.
(エドワードとジョンは、兄弟なのですが、ロンドン出身です)
国語(日本語)でも文末に「。」を書き忘れると減点されることがありますが、英語でも、文末のピリオドを書き忘れると、マイナス1点の減点となることがほとんどです。書き忘れてはいなくても、罫線と重なっていたり薄すぎたりして判読できない場合は「書き忘れ」とみなされて減点されます。「基本的に、文末には必ずピリオドを置く」、「ピリオドは見える程度にはっきり、しっかりと書く」ということを徹底してください。
ただし、解答欄に書くものが〈文〉ではない場合もあります。長文読解の問題で「itが指すものを、本文から抜き出して答えなさい」といった設問がありますね。その場合、答えとなるのは〈文 (sentence)〉ではなく〈句 (phrase)〉です。そういうときは、末尾にピリオドを書く必要はありません(むしろ、書いてはいけません)。
ピリオドの直後はスペースを空ける
ピリオドで〈文〉を切ったあと、次の文を始めるときは、ピリオドの直後に少し空白(スペース)を置きます。パソコンでタイプするときは、Spaceキーを1回押します(2回押すという流儀もありますが、たいていは1回です)。
ここが詰まってしまっていると、可読性が低くなり、答案が書いたとおりに読まれなくなる可能性が高まりますから、注意してください。
例文:
I like cats. I like dogs, too.
(私はねこが好きです。犬も好きです)Edward and John are from London. They are brothers.
(エドワードとジョンはロンドンの出身です。彼らは兄弟です)
略語やイニシャルを使うときに、ピリオドを使う
主にアメリカ英語での用法ですが、the United Statesをthe U.S. とするように、単語の先頭の文字だけを残して略語にするときにピリオドを使います(イギリス英語では、原則として、このピリオドは使いません。the USと書きます)。このピリオドは、直後にスペースをつけず、次の文字を続けて書きます。
文中にある場合も、直後にコンマが来る場合も、このピリオドは省略しません。ただし文末にある場合は、ピリオドを2つ重ねるということはしません。
例文:
Meg is from the U.S.
(× Meg is from the U.S..)
(メグはアメリカの出身です)Meg is from the U.S., isn’t she?
(× Meg is from the U.S, isn’t she?)
(メグはアメリカの出身ですよね)
人名をイニシャルで表すときもピリオドを使いますが、その場合は直後にスペースを置きます。例えば、Edward Hallett Carrという人名は、E. H. Carrと表記されえます。
ピリオド以外の記号を文末に置く場合
疑問文や感嘆文のように、文末にピリオド以外の記号を置く場合は、ピリオドは使いません(違う記号を重ねて使うことはありません)。
例文:
Have you ever been to Osaka?
(× Have you ever been to Osaka?.)
(大阪へいらっしゃったことはおありですか?)What a lovely day!
(× What a lovely day!.)
(なんてすてきな日なんだろう!)
以上、「わかりきってるよ」と思っていても、ピリオドの使い方などという細かいところで減点されないように、改めて確認しておいてください。
コンマ ( , )
コンマ (comma) は日本語の句読法でいうと「読点(、)」に相当するものです。ただし、日本語の読点とは異なり、英語のコンマには使うべき場合について、かなり明確なルールがあります。
日本語の読点は、読みやすくなるかどうか、意味が紛らわしくならないかどうかということを考慮して、その時その場で使うかどうか判断することが多いし、ウェブで横書きで日本語を書くときは、読点が多めになります。
それに比べて、英語のコンマは、「絶対に使わなければならない場合」や「絶対にとまでは言わないが、使うのが普通の場合」がかなり多くあります。パソコンで文章を書くからといって、手描きの場合よりもコンマが増えるといったことにはならず、基本的なルールを押さえた上で、コンマがあまり多くなりすぎないように使います。
そういった約束事を確認していきましょう。
等位接続詞を使って語句を列挙する場合にコンマを使う
これは日本語でもほぼ必ず読点を使うところですが、3つ以上の語句を並べるとき、必ずコンマを使います。コンマを書くときは、ピリオドと同じように、直後にはスペース(空白)を置くようにします。
例文:
I bought some apples, oranges, lemons and kiwis.
(りんごとオレンジ、レモンやキウィを買いました)My favourite cities are Paris, New York, and London.
(私が好きな都市は、パリとニューヨークとロンドンです)
※上記の例では、andの直前のコンマはあってもなくてもよいです。
これらの文にコンマがないと、どこでどう区切るのかがわからなくなってしまいますね。特に “Paris, New York” は “Paris New York” と書かれていたら、2つの都市名だということがわかりづらくなります。
形容詞や動詞など名詞以外の品詞の単語や、複数の単語がひとまとまりとなった句を並べるときも、同様にします。これも、コンマがないと、どこでどう区切られているのかがわからなくなってしまいます。
例文:
Cherries are small, sweet, and refreshing fruit.
(サクランボは小さくて甘くて気分を爽快にしてくれるフルーツです)My five-year-old son talked, cried, and fell asleep.
(5歳の息子は、しゃべって、泣いて、眠りに落ちました)I traveled to Paris, visited the museum, and saw the painting.
(私はパリに行き、その博物館を訪れて、その絵を見ました)
従属節と主節の間に置く
when, becauseなどの従属接続詞が導く副詞節が主節に先行する場合、コンマを置きます。従属節と主節の順序が反対の場合は、コンマがないことが多いです。
例文:
When I was a child, I liked drawing animals.
⇒ I liked drawing animals when I was a child.
(子どものころ、私は動物の絵を描くのが好きでした)Because it’s healthy, I eat yogurt every morning.
⇒ I eat yogurt every morning because it’s healthy.
(健康的なので、私は毎朝ヨーグルトを食べます)
通信添削の答案を見ていて、パンクチュエーションで減点することが多いのの第1位は「ピリオドの抜け」ですが、その次がこの「従属接続詞とコンマの使い方」です。なぜか、「接続詞の直後にコンマを置く」と勘違いしている人が多いのです。日本語で「というのは、健康によいからです」と書く調子で、becauseの直後にコンマを置いてしまうのかもしれませんが、間違いです。
もう少し一般論化して説明しましょう。従属節(副詞節)は、節単位でコンマで区切ることはありますが、節の中で節を導く接続詞とそれに続く〈S + V〉の構造の部分の間にコンマを置くことはありません。下記の図で色つき背景で示すような書き方をすると減点されてしまうので、気をつけましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか? 勘違いしていたこと、知らなかったことがあったら、この機会に覚えてしまいましょう。わかりきっていることばかりだと思っても、改めて確認しておきましょう。
ピリオドやコンマの使い方については、ほんの少し気をつけるだけで、しなくてもよい失点を防げます。「細かいこと」とあなどらず、しっかり対策しておきましょう。
参考書
パンクチュエーションについては、社会人になって自分で英語で文書を書くようになって初めて体系的にルールを調べることになったという人も多く、大学受験参考書ではない一般向けの英語本として出版されている本に、わかりやすいものが何冊かあります。下記の書籍はイギリスで出版されておおいに話題になった書籍の日本語訳。原書を見てみるのもおもしろいですよ。
原書のタイトル、”Eats, Shoots and Leaves” は、主語をThe pandaにすると意味がわかります。つまり、”The panda eats shoots and leaves.” とコンマなしならば、「そのパンダは新芽を食べて、そして立ち去る」の意味で、ごく普通の文です。一方、変なところにコンマを入れて “The panda eats, shoots and leaves.” とすると、「そのパンダはものを食べ、銃撃し、そして立ち去る」というナンセンスな文になってしまいます。
コンマについての同様のおもしろおかしい例文に、次のようなものもあります。和やかな一家団欒が、たった1つのコンマのせいで血みどろホラーに……!
Let’s eat, Granma! (おばあちゃん、さあ、食事にしましょう)
Let’s eat Granma! (おばあちゃんを食べましょう)
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■注■
ヘッダー画像文章出典: https://en.wikipedia.org/wiki/Punctuation
ヘッダー画像使用フォント: FFF Tusj by Magnus Cederholm