英語の文字の書き方のお約束を押さえ、失点しない答案を作成しよう

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ちゃんと書いたつもりなのに「スペルミス」と減点されたり、「判読不能」と言われたりする(悩)

「英語は、マークシートなら確実なんですが、記述式はイマイチ自信がありません」――こんな相談を受けたことがあります。最初は単に、4択問題は得意だが、まっさらな解答欄に入れる答えを自分で考えるのが苦手なのかなと思い、「設問形式に不慣れなだけですから、どんどん問題を解いて慣れることが肝心」とお伝えしたのですが、「そういうことではなく……」とのこと。

では、単語のスペルがなかなか覚えられないのかなということで、「紙に書いて覚えるのが一番。書きながら口にするともっと記憶しやすくなるので、苦手な単語や、答案でスペルミスを指摘された単語は、軽く音読しながら10回書いてみるという方法を試してみては」と提案したのですが、そういうことでもないという話です。

いったいどういうことかというと、答案用紙に書いたように読まれずバツにされてしまったり、「スペルミスです」とか「判読不能です」とコメントされたりすることが多い、とのこと。つまり、単刀直入に言えば、字が汚い

しかし――とその人は言います。自分は確かに字はきれいではないけれど、日本語で書くときは「もっと丁寧に書きましょう」とは言われても「読めない」とまでは言われないし、数学でも特別困ることはない。「英語だけなんです。英語では、何か特別なコツみたいなものがあるのかどうか……」と悩んでいます。

なるほど。英語の文字を書く上での基本的なルールを教わる前に、文字の形だけ何となく覚えてしまうと、このようなことになりえるのですよね。ちょうど、非日本語話者の人が見よう見まねで漢字を書くと、努力のあとは微笑ましいし可愛い印象すらあるものの、ガタガタしていて、「へん」と「つくり」のバランスが悪くて、非常に読みづらい文字になってしまいがちなのと同じことです。

確実に間違いなく読んでもらえる英語の書き方のコツ

英語の文字には基本的な約束事があります。それを押さえて書くことで、筆跡は格段に読みやすくなります。

「ベースライン」を意識しよう

英語の文字(アルファベット)と日本語の文字は、構造自体が違います。日本語の文字は、楷書では正方形の升目の中心を基準にして、その升目を埋める感じを意識して書くよう教わりますね。一方でアルファベットは「升目」ではなく、基準となる「線」の上に並べるように意識して書きます。日本語が「箱の中に、個別包装されたキャラメルを並べる」ようなイメージとすれば、英語(をはじめとするアルファベットの言語)は「電線に小鳥が並んで止まっている」イメージです。下側の線がかっちり決まっていることが必要なのです。

アルファベットを書くときの基準の線を、「ベースライン baseline」と呼びます。「ベースライン」は、コンピューターなどで使うフォントをデザインするときに、最も重要な要素のひとつとなっています。
 
 
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添付の画像は英語版ウィキペディアに掲載されているものですが(By Max Naylor [Public domain], from Wikimedia Commons)、この図で赤で示されているのが「ベースライン」です。このベースラインの上に文字を乗っける(ただし、「g」や「y」など、下に飛び出る尻尾がついた文字もいくつかある)というのが、アルファベットの文字を並べるときの基本的な感覚です。

英文を書くときは、どんな場合でも常に、この「ベースライン」を意識するようにしましょう。

英語の答案を作成する際、「読める文字」で書くことが他教科以上に重要になる理由

日本語の文字でも、何が書いてあるのかわかりづらい筆跡では、文を読むのが苦痛になりますね。英語の場合も同じで、その「わかりづらさ」を左右する大きな要素が「ベースラインが一貫しているかどうか」です。ベースラインが一貫していないと、ぱっと見たときに、「アルファベットの文字列」として認識することが難しくなってしまい、その結果、読むのに支障をきたすことになります。

英文読解で「itが指しているものは何か、英語で答えよ」といった設問で、単語を1つか2つだけ書くような場合は、書き方が多少歪んでいてもさほど問題にはならないでしょう。「該当する部分を本文から抜き出して答えよ」という設問も同じ。問題と成るのは、それなりの長さのある英文を書く場合です。長ければ長いほど、ベースラインが一貫していないものは読みづらくなります。

それに加えて、英作文では「何が書かれているのか」が採点者に予測しづらいという要因があります。

日本語の文でも、筆跡が読みづらい場合は、いろいろ予測したり類推したりしながら「このように書いてあるのだろう」とカンを働かせて読みますね。英語でもそのようにできればまだ楽なのですが、英作文、特に自由英作文の場合は、答案を書いた受験生が、構文や単語という点で、採点者が予測しているようには書いていないということもとても多いのです。つまり、採点者の予測・判断が利かないのです。

例えば「この本は読む価値がある」なら、This book is worth reading. とか、It is worth reading this book. と表現するのがお約束ですね。そう書いてあるのなら、文字が読みづらくても、「ここはworth readingと書いているのだな」などと予測・判断できます。

一方で、英作文では、その定番のフレーズを知らないとか思いつかないような場合に、何とか工夫して表すということも行われます(それ自体は悪いことでは全然ありません)。そうして、This book is valuable など模範的な正解から外れた回答が書かれていた場合、単に「バツ」にするのではなく採点基準にそって採点することになります。そのような場合、採点者の立場からいえば「受験者はworth readingを使ってくるという予測が通用しない」ことになり、「予測によって、筆跡が読みづらいことをカバーして読む」という普通のテクニックが使えないのです。

受験者の立場からいえば、「字が汚い」ことが「答案が書いたとおりには読まれない」という結果に終わる可能性が高まります。(むろん、採点者も最善を尽くして、答案をしっかり読もうとします。それでも、そういうことは起こりえます。)

さらに原文となる日本語文が存在しない自由英作文となると、書いた人(受験者)が何を言いたくてそのような英文を書いているのかも、前提として採点者にはわかりませんから、答案の文字が読めなければ、採点するというプロセス自体に入ることができません。

「ベースライン」を意識しないで書くと、どのくらい読みづらくなるか

少し実例として、英語の文字の書き方を見てみましょう(なお、これらの画像はすべて筆者がサンプルとして書いたものです)。

入試で使われる答案用紙の解答欄では、欄の下の線を「ベースライン」として使っても別に悪くはないのですが(下図②)、欄自体が最大限の幅(この図で “ascender height” と “descender height” と示されている範囲)を示しているととらえたほうが使いやすいようで、受験生のみなさんの答案を見ると、解答用紙をそのように使っている答案がほとんどです(下図①)。

※以下、煩雑になることを避けるため、解答用紙の解答欄の下の線だけを示して図解しています。
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解答用紙の枠全体を英語の文字の最大限の幅として使う場合、図の①のように、解答欄の下の線は”descender height” のラインとなり、「ベースライン」が印刷されていないことになります(「フリーハンド」の状態)。そのため、見えない線があることを想定してその上に文字を並べていくことになるわけですが、その「見えない線」というのがなかなか一貫させづらいのです。

日本語でも、罫線のない紙に書くと、横書きでは全体的に右上がりになってしまったり、縦書きでは左側にうねっていってしまったりすることがありますね。英語でも幅の広い解答欄の枠内で見えない基準線(ベースライン)を想定しようとしてうまく行かず、日本語で文字が曲がってしまうのと同じようなことが起こるのです。気にならない程度のことが多いのですが、入試での英作文のように長い英文を書くときには、程度がひどければ「判読不能」となってしまうことがあります。

よくありがちなのが、本来はベースラインの下に伸びている文字(「g」や「y」、「p」など)が、ベースラインの上に乗っている文字(「a」や「c」や「h」などなど)と同じ高さで並んでしまっている筆跡(下図③)。これは、程度やほかの要素(後述)との重なり具合にもよりますが、実際問題として、読むときにはさほど問題にはならないので、過剰に気にする必要はありません。でもなるべく、こういうふうにならないように書きましょう。

それより問題なのは、ベースラインが上に行ったり下に行ったり、右上がりになったり右下がりになったりと、のたくってしまう例です(下図④)。

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図③はさほど読みづらさを感じさせませんが、図④のように書かれていると一気に読みづらくなります。文字の形自体はほとんど変わらないのに(サンプルの文字は、わざとベースラインを崩して書こうとしているのでぎこちなくなってしまっているのですが、その点は見逃してください)、③と比べると、④は一気に可読性が下がっていることが確認できると思います。

こうなると、仮に一文字一文字は丁寧にきれいに書かれていたとしても、全体として「書いた通りに読まれるかどうか」という点で問題が出てきてしまいかねません。

単語間の空きを一定に保とう

ベースラインがのたくっているくらいなら、まだ、20語くらいまでの短い英文なら採点者も誤読せずに読めるのではないかと思います(40語、50語と長い英文になればなるほど、誤読の可能性は高まりますが……)。

しかし、それに加えて「単語と単語の間の空きがバラバラ」とか「空きが狭すぎる」という要素が加わると、本当に「字が汚すぎて読めない」ような答案になってしまいます。英語をあまり書き慣れていない人が、文を考えながら書いている場合や、書くスペースが足らなくなってきた場合に、このように「空きがバラバラ」という現象が発生することが多いようです。

下図⑤は、筆者がぎこちなく単語間の空きをバラバラにしてみた例です(ぎこちないのは見逃してください)。図④までに比べて、同じスペースにより多く書けてはいますが、自分用のメモならまだしも、他人に読んでもらうことが前提の文ならば、こんなふうに書かず、単語間の空きを一定に保ち、ベースラインをなるべく一貫させるようにして書くべきです。

このような筆跡で、採点者の予想していないような単語・フレーズの組み合わせで英文が書かれていたら、「受験生は exist と書いたつもりだったのに、採点者には exit としか読めなかった」といったことになっても不思議ではありません。

なお、筆記体(図⑥)は試験の答案では推奨されていないのですが、ブロック体で書いてはいるものの、ベースラインがのたくり、単語間の空きもちゃんとしていないような筆跡よりも、非推奨の筆記体の方がよほど可読性が高いです。

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文字は大きめに、一定のリズムをなるべくキープして書こう

上で述べたように、日本語は基本的に1つ1つの文字の幅が一定していて、1つのマスに1つの文字を入れるように書けば、たとえ字がうまくなくても、それなりにすっきり整って見えます。

しかしアルファベットは1つ1つの文字の幅がばらばらです。「m」や「w」のように幅が広めの文字もあれば、「l」や「f」のような狭い文字もあります。

このときに、全体の基準が、どちらかと言えば幅の広い文字に寄っていれば書かれた英文は読みやすくなるのですが、幅の狭い文字に寄ってしまっていると著しく読みづらくなります。「ol」が「d」に見えてしまったり、「l」と「d」の判別が困難になっていたり、「r」と「i」がほとんど区別がつかなかったり……という筆跡では、採点以前に、単語が読めません。

自分用のメモなら(自分で判読できる限りは)それでもよいのですが、試験の答案でそのように書くことは、「点数はくれなくていいです」と言っているようなもの。絶対に避けましょう。

(一度、通信添削の解答で、本当に糸くずを丸めたような筆跡に遭遇して、閉口したことがあります――「英作文の採点」というプロセスに入る以前に、何と書いてあるのかが読めません! しかもスペルミスが多く、例えば clock を crock と書いていたりするので、ほとんど暗号解読の域でした。むろん、減点に減点が重なって、採点結果は0点になりました。)

とはいえ、書きグセで文字が小さくなってしまうという人もいると思います。その場合、無理に大きく書こうとすると、ベースラインがのたくったり単語間の空きがめちゃくちゃになってしまったりしますし、文字に一生懸命になって肝心の英作文の内容にエネルギーが割けないのでは本末転倒です。無理をせず、ほんの少しだけ、文字を幅広気味に書いて単語間の空きを一定に保つようにしてみてください。具体的には、「a」や「o」の文字を縦長の楕円にするのではなく、円にするイメージです。

そのようにして書くと、見た目にも「リズム」が出てくると思います。字のうまい・へたとは別に、読みやすい英文には「リズム」があります。それを意識しながら書いてみることで、誤読されない答案が作成できるようになっていくでしょう。

下記の例は、ネットで見つけたブロック体の手書き文字の例です。非常に読みやすい筆跡です。フィリピンのSacha Chuaさんという方がつけている毎日の手書きの日記です。書かれている内容はさておき、文字の書かれ方、特にひとつひとつの文字の幅や単語間のスペースの取り方に注目してみてください。

こういうふうに書けば、「書いたとおりに読まれない」ということはなくなるでしょう。

鉛筆は削り、文字をつぶさないように書こう

最後に、もっと物理的な要因について述べておきたいと思います。

添削答案を見ていると、ときどき、先の丸くなった鉛筆で書かれ、文字がつぶれている筆跡に出くわすことがあります。これは、試験本番では絶対にやってはいけません! 鉛筆は適度にとがらせて、「o」や「a」のような文字を書いたときに、丸の中の空間がしっかり出るようにしましょう。

また、いったん書いたものを消して書き直すときには、前の筆跡が残らないようにしっかり消すこと。

それから、単語や語句を消した場合はそのまま空白にしておくのではなく、(その行だけでよいので)前後を詰めて空白をなるべくなくしておきましょう。「単語を書き直そうとしたが、そのまま忘れているのだろう」、「何か単語を書こうとしたが、スペルを度忘れしてしまったのだろう」と解釈されたら、減点対象になってしまう可能性もありますからね。

まとめ

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答案で「きれいな文字」を書こうとする必要は、必ずしも、ありません。しかし「他人が苦労せずに読める文字」を書くことは、普段の生活と同様、入試でも必須です。

アルファベットという文字は、字形は単純です。基本的な構造と書き方のお約束を踏まえておきさえすれば、だいたいどう書いても「他人が苦労せずに読める文字」になるはずなのです。日本語の文字のように何種類も文字があって、それぞれでタテヨコナナメが入り乱れてハネだのハライだのが錯綜しているということはありませんし(そのような特性から、「ハンドル」と書いたはずのものが「インド人」と誤読されるといったことも起こるのが、日本語です)。

だから、添削で「判読不能」系のコメントをつけられることが多くてヘコんでいる方は、一度、今回説明したような基本的なお約束を見直し、今後はそれを意識してみるようにしてください。「ベースライン」を一貫させ、単語と単語の間の空きを同じリズムになるように保ち、1つ1つの文字を細長く書きすぎないようにすることを意識するだけでも、ずいぶん違ってくるはずです。

ほんの少し気を使うだけで、劇的に改善が見られるポイントですよ。

受験では、書いた通りに読まれなかったら、受験者が一方的に損をして終わり

学校の試験や塾・通信添削の教材なら、採点者が読み損なって減点したところについては、「ここは “o” ではなく、ちゃんと “a” と書いてあります」などと申し出れば、△を○に、4点を5点に修正してもらえるかもしれません。

しかし、大学入試では、そのような異議申し立ての機会は受験者には与えられません。書いた通りに読まれなかった場合、受験者が一方的に損をして終了です。せっかく “draw a conclusion” という表現を使っているのに “drow” と書いてあるように採点者に見えてしまったら、スペルミスとして1点減点されます。仮に採点者の誤読であったとしても、答案が受験者に返却されることはなく、誤読は発覚しえないので、減点はそのままです。しかもそれが合否に直結します。

だからこそ、最初から「書いた通りに読まれる答案」を作成することは、決してあなどれない重要なポイントなのです。誰がどう読んでも(”drow” ではなく) “draw” だ、と言い切れるような答案を書くことを、なるべく早いうちから習慣付けておきましょう。

英語力を磨き、得点力をアップさせておくことが、入試に際しては最も重要であることは言わずもがなですが、英語力以外の要因で減点されないように準備しておくことも重要ですよ。


※文中の相談事例は、ずっと昔に実際にあったことに基づいたフィクションです。あなたの身の回りの現実に一致している部分があっても、それは単なる偶然です。

 

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