受験生が本番直前となった今の時期は、高校2年生にとっては「そろそろ大学受験の準備に本腰を入れないと……」という時期ですね。
十分な基礎力がある科目は、積極的に実践レベルの問題を解いていくのも試験対策として有効ですが、基礎力が備わっていない場合は、実践レベルの問題をいくら解いたところで、実力アップ・得点力アップにはつながりません。
そんなことは言われなくてもわかりきっている、と思われるかもしれませんが、英語では、なぜか、基礎力もないのに実践レベルの問題を解いて「試験勉強をしている気分」だけ味わってしまうことがよくあるのです。
数学ならば、一次方程式ができないのに二次方程式の問題を解こうとしても無理なのですが、英語の場合は、be動詞と一般動詞を一緒に使っていても「文法ミスは減点」となるだけで、少しでも点をもらえたりすることが、錯覚を生じさせてしまうのかもしれません。
英語の力が伸び悩んでいる人は、「大学受験なのだから」という思い込みを捨てて、一度、中学英語を見直してみませんか。
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「やり直し英語」というコンセプト
東京都内の大型書店の英語本コーナーには、資格試験受験者や社会人向けの英語本が、実にたくさん並んでいます。その中でも目を引くのが「やり直し英語」に関する本の数々。
大学を卒業して社会人となった人たちが、グローバルなビジネスという環境の変化によって「英語ができる社員」になることを求められるようになったのがここ15年くらいのことでしょうか。英語なんて大学受験が終わったら忘れたよ、という人たちが企業で社員としてばりばり働くようになって何年もたってから、「じゃ、半年後にTOEIC受けてください」と言われるようになったのです。いきなりそんなこと言われても、英語なんて忘れちゃってます。「3単現のs」だとか「比較級」だとかいった断片が何となく記憶の底にあるんだけど、それが具体的にどういうものだったか、まるで思い出せない。
ああ、こんなことなら、あのときにまじめに英語を勉強しておけばよかった……!
そういうところにニーズが生じて、「中学英語をやり直そう」というテーマで書かれた英語本がたくさん出版されることになったのです。それらの本は恒常的に売れていて、今ではすっかり「定番の英語本」の一角を占めています。今日もまた、英語を勉強し直す必要に迫られた社会人の人たちが、それらの本の並ぶ棚の前で、本のページをめくりながら、自分に合った一冊を探しています。
意外とできない「中学英語」
これから大学を受験するみなさんの世代が生まれたころから、「英語を身につける必要がある」という前提で教育環境が構築されつつあったと言えます。
だから中学英語は一度やっただけで完全に頭に入るよう教科書も学校の授業も工夫されていて、「やり直し」の必要などない……のならすばらしいのですが、残念ながら、そうはなっていないようです。
現時点で、大学受験生の書いた英語(英作文問題の解答)を見る限り、多くの――いや、ほとんどすべての――方が、中学の復習を必要としているというのが現実です。中学のときにうろ覚えのまま済ませてしまったところが、大学受験を目前に控えた段階になっても、失点要因になっているのです。国立大学二次試験の自由英作文のような高度な問題の回答で、He is play tennis. とか I reading a book on the environmental problems. といったミスをしては「文法ミス」で減点され、「あーあ、やっちゃった」と思って、そしてまた同じようなミスを繰り返す……などということをしていてはいけません。
大学入学突破を目指すには、失点要因をつぶしていかねばなりません。そのために、まずは中学英語という基本を確認しておくことは、とても重要です。
中学で習う英文法は、数学の四則計算のようなもの
時制や3単現のs、動詞の活用形、単数・複数、比較級、to不定詞といった、中学で習う文法事項は、大学に入ってから使う学問的(アカデミック)な英語、あるいは大人になってから使う実用的な英語を理解する上での基礎の基礎、数学でいえば四則計算のようなものです。
足し算ができない人に掛け算をやれといっても無理だし、ましてや三角関数や微積分などできませんね。
いやいや、掛け算というものなど理解していなくても、九九を暗記していさえすれば、何となく対応できてしまうよ、と言う人もいるかもしれません(「数学は暗記科目だ」と言い切る人もいるくらいです)。しかし、それでは税率8パーセントの消費税の計算すらまともにはできないでしょう。
同じように、英語ではbe動詞をどう使うべきか、一般動詞をどう使うべきかといったことが頭に入っていなければ、簡単な自己紹介ですらまともにはできません。
基礎を固めずに先に進むことはできない。改めて「中学3年分のまとめ」を
こう言われて、内心思い当たる節がある人は、本屋さんに行って、中学生向けの問題集(高校受験直前にやるような「3年分のまとめ」のようなもの)を購入して、やってみてください。下記のような立派なものでなく、薄っぺらいものでよいです。重要なのは1冊、最初から最後まで全部やることです。途中で放り出してしまいそうな分厚い問題集は、買っても無駄ですからね!
といっても、中学のときに解いた問題と同じ問題ものを、高校生の今になって解くのは、やっぱりかったるいし、何だかばかばかしいような気分になりますよね。単語も文の内容も中学生向けですからね。
中学で習ったことが、本当に理解できているかどうか、確認を
それに、よく見られるのは中学英語そのものができないケースというよりは、中学で習った文法事項を本当に理解していないために応用ができていないというケースです。
例えば「複数形」について、中学の問題集に載っている問題は解けても、高校教科書に出ているようなことが自力では書けないというような場合です(高校生になってまで、中1で習う複数形のことに目を配っていなければならないと思う人は、あんまりいないかもしれません)。
具体的には次のようなものです:
【中学の問題集では……】
They built a school. (下線部を複数形にしなさい)
→ They built schools.
There is a book on the desk. (下線部に two をつけて複数形にし、全文を書き換えなさい)
→ There are two books on the desk.
This pen is mine. (下線部を複数形にし、全文を書き換えなさい)
→ These pens are mine.
【高校の教科書などでは……】
The number of schools① in this city has steadily decreased.
As a result of the various changes② in the policies, more and more young people③ are now encouraged to study abroad.
①がなぜ、sのついた複数形になっているのか、説明できますか?
②はどうでしょう?
では③は? 直後が複数で用いられるbe動詞のareなのに、なぜこの単語には複数形のsがついてないのでしょう?
こういったことが説明できないと、「学校の数」を英訳するときに、the number of schools という〈the number of + 複数形〉の形が作れません。various という「複数あること」を前提とする形容詞に続けて単数形を置いていても違和感を覚えません。people にsをつけて「複数形」を作ってしまいます(あまり知られていませんが、実は people は person の複数形として使われる語なのです)。
このような観点で、高校生として接する英文で、中学英語の確認・復習をしていきましょう。「急がば回れ」と言うとおり、それが得点力アップの最大の秘訣です。
「単数形・複数形」など、今さらもうだれも説明しようとしないのですが、いざ、自分で英作文するとなると正しく書けないものです。答案を提出するたびに、そういうところで減点されていてはいけません。
「英語なんか暗記科目だよ」と言う人もいます。しかし、〈the number of + 複数形〉を暗記していても、〈various + 複数形〉を暗記していなかったら減点されてしまいます。「複数形」について、論理的に(理屈で)理解することが、失点を防ぐために必要なのです。
まとめ
中学で習う英文法は、中学を終えたら忘れてしまってよいものではなく、すべての基礎になるものです。
「中学のとき、英語が苦手だった」という方や「暗記で何とか乗り越えた」という方は、その基礎が十分に整えられていない可能性が非常に高いです。
試験直前になって慌てることのないよう、早めに復習・確認に取り組んでおきましょう。