前回の当コラムの後半で、中学で習うような基本を確認しました。
They built a school. (下線部を複数形にしなさい)
→ They built schools.There is a book on the desk. (下線部に two をつけて複数形にし、全文を書き換えなさい)
→ There are two books on the desk.This pen is mine. (下線部を複数形にし、全文を書き換えなさい)
→ These pens are mine.
今回から3回にわたって、ここで確認したことを改めておさらいしていきましょう。まずは「複数形」とは何か、ということから始めます。
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日本語にはない「複数形」という概念
こんな会話、ありがちですよね――
「うち、猫いるんだ」
「へー、いいね。1匹?」
「2匹。1匹は白猫でタマっていうおばあちゃん猫だけど、もう1匹はサバトラの子猫で、タビちゃん」
「いいな、子猫かわいいんだろうな。私も猫欲しい。もふもふしたい!」
「飼えばいいじゃん。もふもふし放題だよ」
「無理、親が猫アレルギーで……」
これを英語にしようとすると、困ってしまいます。
「困るって、どこが?」と思われるかもしれませんが、最初のセリフ、「うち、猫いるんだ」の「猫」はcatなのでしょうか、それともcats?
日本語には「複数形」という概念はありません。「学校」がいくつあっても「学校」という語の形が変わることはありません。「犬」や「猫」も、1匹だけだろうが101匹だろうが「犬」、「猫」です。場合によっては「諸学校」や「犬たち、猫たち」のように何か言い添えて複数であると明示することはありますが、語の形そのものが変わるわけではありません。
※なお、日本語でも口語では「にゃん」(猫)に英語の複数形のsをつけて「にゃんズ」(猫たち)のように言うことがありますが、これは正式な日本語ではありません(試験の答案や論文、新聞の文面、目上の人への通信文などでは使えない表現です)。
英語の複数形
一方で英語では――というより、英語を含めたヨーロッパ系の諸言語では――、「1つだけ」の場合と「2つ以上」の場合とでは語の形が異なります。「2つ以上」の場合の語形を「複数形」と言います。
英語の複数形の作り方
英語では(英語だけでなくフランス語でもそうなのですが)、ほとんどの場合、「1つだけ」の形にsをつけることで「2つ以上」を表します。
a school (1つの学校)→ schools (複数の学校)
a book (1冊の本)→ books (複数の本)
a cat (1匹の猫)→ cats (複数の猫)
a bottle(1本の瓶)→ bottles(複数の瓶)
このsを「複数のs」、または「複数形のs」と言います。
「複数のs」をつけるときの注意点
「複数形のs」のつけ方には、いくつか変則的なルールもあります。
【変則ルール1】-s, -ss, -x, -sh, -ch, (-o) で終わる語は、-esをつける。
a bus (1台のバス)→ buses (複数台のバス)
a boss (1人の上司)→ bosses (上司たち)
a box (1つの箱)→ boxes (複数の箱)
a dish (1枚の皿)→ dishes (複数の皿)
a bench (1台のベンチ)→ benches(複数のベンチ)
なお、-oで終わる語には、-esをつけるものと-sだけでいいものとがあります(ややこしいことに、どっちでもいいものもあります)。-esのほうが少ないので、そっちを覚えてしまうのがよいでしょう。
a potato(1つのジャガイモ)→ potatoes(ジャガイモ一般、複数のジャガイモ)
a tomato(1つのトマト)→ tomatoes(トマト一般、複数のトマト)
a hero(1人のヒーロー、英雄)→ heroes(ヒーローたち、英雄たち)
a mosquito(1匹の蚊)→ mosquitoes (蚊一般、蚊というもの、複数の蚊)
-oで終わる語で単に-sをつけるものとしては、photo (photos), piano (pianos), zoo (zoos), studio (studios) などがあります。zeroなどはzerosでもzeroesでもどっちでもよいです。
【変則ルール2】「子音+y」で終わる語は、y を i にかえて、-es をつける。
※「子音」とは、ざっくり言うと、「アイウエオ」以外の音のことです。k, s, t, n, m…などなど。
a city (1つの都市)→ cities (複数の都市)
a country (1つの国)→ countries (複数の国)
a fly(1匹のハエ)→ flies (複数のハエ)
【変則ルール2’】「母音+y」で終わる語は、そのまま、-s をつける。
※「母音」とは、ざっくり言うと、「アイウエオ」に属する音のことです。上記「変則ルール2」に引っ張られてしまうことが多いのですが、同じように-yで終わっていても、直前が母音ならばyをiに変えず、そのままで-sをつけます。
a boy (1人の男子)→ boys (男子たち)
a key(1つの鍵)→ keys(複数の鍵)
a play(1本の戯曲)→ plays(複数の戯曲)
……ほか、-f, -feで終わる語には、fをvに変えてsをつけるものがあったりします(a leaf → leaves「木の葉」、a knife → knives「ナイフ」、a wife → wives 「妻」など)。
また、単数でも複数でも語の形が変わらないものもあります(a sheep → sheep「ヒツジ」、a fish → fish「魚」など。このような語を「単複同形」であると説明します)。
「複数形のルール」は英語を習い始めればすぐに教わるのですが、「複数形」の概念自体がない言語を母語としている私たちにとっては、なかなかにややこしいものです。法則が決まっていればよいのですが、英語の場合はあまりに細かい部分まで法則性を気にするといずれ行き詰まってしまいます。変則・例外っぽいものは、あまり深く追求せず、勉強している間に出くわすたびに確実に覚えていくようにすれば大丈夫です。
英語の世界には、catはいない
実際の生活の中での英語では、単にcatという語は使いません。辞書・辞典の中には見出し語として存在していますが、実際に「ことば」として使われるときは、常にa catやthe catであるか、catsやthe catsであるか、です。(例外として、名詞が形容詞的に使われるときはcatのままです。この話は、また別の回のコラムで詳しく扱います。また、めったにないことですが、理論上は猫を《物質》扱いするときはcatという形を使うことになるでしょう。)
ウィキペディアのSimple English版を見てみましょう。以下、太字で強調したように、常にcatsであるか、a catであるかのどちらかになっていますね。
Cats, also called domestic cats (Felis catus), are carnivorous (meat-eating) mammals, of the family Felidae.
Cats have been domesticated (tame) for nearly 10,000 years. …
Cats were probably first kept because they ate mice, and this is still their main ‘job’ in farms throughout the world. Later they were kept because they are friendly and good companions.
A young cat is called a kitten. Cats are sometimes called kitty or pussycat. A female cat that has not had its sex organs removed is called a queen. A male cat that has not had its sex organs removed is called a tom.
まとめ
「複数形」は英語を習い始めてすぐに教わる、基本中の基本です。でもその「複数形」の本質は、ほとんどの受験生はあまり深くは学ばないまま、大学受験を迎えます。社会人になってから英語の習得を迫られた場合も、「複数形」は案外大きな難関となっています。
「複数形」は日本語と英語の最大の違いのひとつで、日本語を母語とする私たちは間違えることが多いのです。別な視点から言えば、入試で狙われるポイントです。
とはいえ、英文を読むときはさほど問題ないでしょう。重要なのは、英文を書くときに「複数形」をしっかり使えるかどうかです。
日本語では「この町には学校がある」と言う場合、その学校がいくつあるのかは特に気にしません。日本語はそういう言語なのです。しかし英語では常に、「1つなのか、2つ以上(複数)なのか」を考えることになります。別な言い方をすれば、「学校」は単にschoolであることはなく、a schoolか、schoolsか、どちらかの形でしか存在しえません(正確にいえば、これらに加えてtheのついた形もあります。でも今回は、〈a + 単数形〉か、〈複数形〉かのどちらか、という基本中の基本を、頭に叩き込んでおいてください)。
「猫」も基本的に、常にa catであるか、catsであるかのどちらかで、単にcatとは言いません。「私は猫という動物が好き」は I like cats. です(I like cat. ではありません)。
「学校の数」と言うとき、「学校」が1つだけではなく複数存在していることが前提となります。だからthe number of schoolsと、複数形を使わなければ意味を成さないのです。答案の添削をしていると、こういうところで失点しているケースがとても多いです。(添削で失点するのは別に構いません。でも、失点したときに覚えないのは問題です。本番での得点力に影響が出ますから。)
日本語と英語のこの違いについては、中学では十分には習わなかったかもしれません。教わっていたとしても十分に記憶には残っていないかもしれません。だからこそ、ここは「やり直し」の精神で見直しておきましょう。中学のときに比べてずっとたくさんの英語に接してきた今だからこそ、少し見直せばさくさくと頭に入ってきて、しっかり整理されるはずです。
なお、今日見てきたような語は「数が数えられる名詞」ということで「可算名詞」と言います。そして英語には「数が数えられない名詞」もたくさんあります。その話は、また次回に!
もっと深く勉強したい方には……
https://en.oxforddictionaries.com/spelling/plurals-of-nouns
http://eigo-jouhou.com/singular-and-plural/
http://blog.livedoor.jp/veritedesu/archives/1877018.html
https://www.juku.st/info/entry/965
単数形と複数形に的を絞った書籍もありますよ。
※今回の復習問題(紙と鉛筆を用意して取り組んでください)
次の語を複数形にしてみましょう。※答えは本ページ末尾
a dog
a fox
a kitty
a life
a way
a porch
an embassy
a princess
a rose
本コラム冒頭の会話文を英語にするとしたら……
最初の方で示した日本語の会話文を英語にするとしたら、このコラムで述べたような単数・複数の問題ゆえに、直訳することはできません。次のように工夫して訳すことになります。《意味》は少し違ってしまうかもしれませんが、こうしないと英語にならないのです。日本語話者にとって、これが英語の難しいところです。
「うち、猫いるんだ」 → I have cats.
※最初から「猫」を複数で表します。
「へー、いいね。1匹?」 → Cool, how many?
※「複数の猫がいる」と言われているときに「1匹?」と聞き返すのは理屈に合わないので、「何匹?」と聞くようにします。
「2匹。1匹は白猫でタマっていうおばあちゃん猫だけど、もう1匹はサバトラの子猫で、タビちゃん」 → Two. One is white, and named Tama. She’s old. The other one is a silver-tabby kitty cat. We call him Tabi-chan.
※復習問題の答え
dogs
foxes
kitties
lives
ways
porches
embassies
princesses
roses