さて、「これを英語で書けますか?」というテーマで世界の国名を見てきたこのシリーズ、前回まで4回に分けて、西ヨーロッパの主要国、アメリカ合衆国、イギリス、英米以外の英語圏主要国について、国名(日本ならJapan)と形容詞形(Japanese)を改めて整理し、その国の首都など基本情報をまとめて見てきました。今回からは「その他の国々」です。
いきなり「その他」扱いはがっさりしすぎではないかと思われるかもしれませんが、「大学入試に際して国名を英語で書けるようにしておくべき(あるいは書けるようにしておいたほうがよい)」という基準で見ているためで、それ以上でもそれ以下でもありません。ここで言及していない国は重要ではないという意味では、もちろん、ありません。
というわけで、今回、まずはアジアとアフリカを見ていきましょう。
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アジアの国々
(ちなみにこの写真はタイで撮影されたものです)
日本については、今さらここで説明するまでもないですね。国名はJapan, 形容詞形はJapaneseです。では、日本の近隣諸国を見ていくことにしましょう。
韓国: South Korea, 北朝鮮: North Korea
朝鮮半島のことを英語ではthe Korean Peninsulaと言います。元は半島全体でひとつでしたが、第2次世界大戦後に北緯38度線を境にして南北に分かれ、その後の朝鮮戦争で軍事境界線が定められて、北側が北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)、南側が韓国(大韓民国)となりました。英語では、それぞれ正式名称もありますが、普段目にする報道などではNorth KoreaとSouth Koreaといいます。2国を合わせて言うときはthe two Koreasです(複数形にすることに注意)。
中国: China
中国はChinaです。形容詞形はChinese(「中国の; 中国語、中国人」。なお、本稿では「~の」の意味に加えて「~語、~人」の意味を表す場合も、煩雑さを避けるために「形容詞形」と表していますので、ご了承ください)。中国は長い歴史においていくつもの国名を有してきましたし(昔は今よりもっと細かい国に分かれていましたし)、今の正式な国名は「中華人民共和国」ですが、大学入試に際してはChina, Chineseが書ければよいでしょう。
Chineseと言えば、日本でも日常的に食べている「中華料理 Chinese cuisine」は英語圏でも定番。街中の料理店で買って帰って家で食べる「持ち帰り Chinese takeout (英国ではtakeaway)」は、ドラマや映画などによく出てきますね。
(この写真、スコットランドでのものですが、日本では中華料理の麺では見慣れないような太い麺ですね……うどんみたい。バリエーションがいろいろあるんでしょう)
中国の首都は北京。日本語では「ペキン」と呼んでいますが、英語ではBeijingと書きます(「ベイジン」は、現代の中国語での呼称に準じた音です)。中国に関しては、ほか、国際都市の上海 (Shanghai)、香港 (Hong Kong) といった地名も、長文に出てきたときにわかるようにしておくとよいでしょう。
なお、中国(中華人民共和国)とは難しい関係にあり、国際的には「国」とは扱われていない台湾はTaiwanと書きますが、オリンピックのような場ではChinese Taipeiと言います。
他のアジア諸国
アジア諸国の国名は、カタカナでしか認識していないと、英文に出てきたときに見てもわからない場合があるので注意しておきましょう。例えばベトナムはVietnam(現地語では Việt Nam)、タイはThailandです(英語でThaiと言えば、形容詞で「タイの」、名詞で「タイ語」「タイ人」の意味になります)。
また、多くの島々から成るフィリピンは、〈定冠詞+複数形〉でthe Philippinesと表します(綴りも難しめなので、自由英作文などで自分で書くことになりそうな場合は、受験前に練習して覚えておきましょう。発音も要注意なのでリンク先で確認してください)。一方、同様に複数の島から成るインドネシアは、普通にIndonesiaと書きます。
南アジアでは、意外と間違えることが多いのがインド。英語ではIndiaです(Indoではありません)。形容詞形はIndianです。
ほか、Pakistan(パキスタン)やAfghanistan(アフガニスタン)も、長文に出てきたときにどの国なのかわからないということがないようにしておくとよいでしょう。
西アジア・アラブでは、Iran(イラン)や Iraq(イラク)、Saudi Arabia(サウジアラビア: 発音注意)、Syria(シリア)やTurkey(トルコ)は、英語の綴りを見たときに迷わず日本語で国名がわかるようにしておきたいですね。(イランとイラクは大人でも混同してしまう人が少なくありませんが、受験生ならイランはペルシャ、イラクは古代メソポタミア文明で現代ではアラブという区別をしっかりさせておきたいところです。)
特に国際情勢に関心が高い人は、自分の考えや意見を求められる自由英作文でこれらの国の名前を出したいなと思ったときに自由に書けるよう、国名の英語での綴りを調べるなどの下準備をしておきましょう。答案の添削をしていると、こういった固有名詞のスペルミスで減点しなければならないことがとても多く、もったいないなと思います。the Iraq Warをthe Iraku Warと書いているようではいけませんよ!
アフリカの国々
「アフリカは国ではない」
「アフリカ」は大陸(といくつかの島)であってひとつの国ではありませんが、いわゆる「先進国」においてはアフリカ全体をまるでひとつの国のように扱うことが珍しくありません。その間違いをただすときに使われるフレーズ、“Africa is not a country” が、一種の標語のようになってしまっているほどです。
日本の受験生のみなさんの英作文などを見ていても、アフリカをひとまとめにして「アフリカは貧しい」などと書いている例はよくありますが、記述が事実に照らして不正確であることから採点が厳しくなってしまうこともありうるので、少しでも関心がある国は国名を書けるようにしておきましょう。あるいは英作文では「アフリカ諸国」という表現 (African countries) を使い、必要に応じて、some African countriesなどと表すようにしましょう。
アフリカ諸国の英語での国名の一覧は、例えばウィキペディア英語版などを参照してください。
アフリカ諸国
アフリカ大陸の北側は地中海に面しています。その一番東に位置するのがエジプトで、英語ではEgypt(発音注意。リンク先で確認してください)。その西隣にあり、国際ニュースに名前が出てくるリビアはLibyaと書きます。長文などに出てきたときにわかるようにしておきたい国名です。北アフリカ一帯に広がっている砂漠が「サハラ砂漠 the Sahara (Desert)」です。
日本が自衛隊を派遣していた南スーダン (South Sudan) は、2011年にスーダン(Sudan: 発音注意)から独立した新しい国です。そのスーダンと南スーダンの東側にあるのがエチオピアで、カタカナでしか認識していないと英語のEthiopiaという綴りを見たときに戸惑ってしまうかもしれません。「アフリカといえば飢餓」というイメージが先進国の間に根強くあるのは、このエチオピアで1980年代に起きた大飢饉について、アイルランドとイギリスを中心に大物ミュージシャンが集結して支援を呼びかけたことのインパクトが、今なお残っているためでしょう。このときに制作されたチャリティ楽曲は当時日本でも大ヒットしましたが、30年以上を経た今もクリスマスの時期になるとあちこちでかかっています。
エチオピアと南スーダンの南側にあるのがケニアで、英語ではKenyaです。発音に注意してください(リスニングでKenyaが出てきたとき「ケンヤ」と聞こえたので日本人の男性名だと思ってしまい、内容がまるで理解できなかった、というケースがあります)。エチオピアとケニアはマラソンが強いことでも有名ですね。またケニアは、アメリカのバラク・オバマ前大統領のお父さんの出身国でもあります(ケニア人留学生としてハワイの大学に在籍中に、前大統領のお母さんと知り合って結婚しました)。
アフリカ諸国では、他に、1994年に大変なジェノサイド(虐殺)が起きたルワンダ (Rwanda) や、長く続いた人種隔離(アパルトヘイト)政策が1990年代に終わって国際社会に復帰し、黒人と白人の関係が急速に改められ、2010年にはサッカーのワールドカップの開催国となった南アフリカ (South Africa) といった国名もチェックしておきましょう。
まとめ
今回見てきたアジアやアフリカの国々の英語での名前は、必ずしも書けるようにする必要はないかもしれませんが、出てきたときにわかるようにしておきたい固有名詞です。また、志望校の英語の試験で自由英作文が課される場合は、自分の関心に応じ、言及する可能性がありそうな国の名前は、試験まで日程的に余裕があるうちに書けるようにしておきましょう。
次回は中南米や東ヨーロッパを見ていきます。
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