日本史は社会科目の中での最も多くの生徒が選択する科目ですが、山川の用語集とか買うとびっくりするほどの用語の数があって、なかなか効果的な勉強方法となると最適解の見出しにくいところです。
特に昨今は単に一問一答形式で事象を暗記する、ということで身につく知識から、その知識がどのようなつながりを持っているのか、その時代の人々への影響、前後の時代へつながり、同年代の他国への影響などをしっかり確認しながら多面的な知識を求めていく傾向が強くなっていることは承知しておくべきでしょう。2020年の制度改革に向けてはなおのことです。
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流れ重視、それとも暗記重視?
日本史の勉強法を色々と確認していくと大きなテーマが2つ出てくるかと思います。それが、「流れを重視して日本史を学ぶべきか」あるいは「暗記を重視して学ぶべきか」という2つです。
たくさんの意見がここにはあるのですが、最終的にどちらが重要、というのは一人一人の受ける学校や学習のタイプによって変わってくると思います。ここでは、それに加えて、第3の選択肢としての「テーマ史で学ぶ」という勉強方法を提唱していきます。
実際の出題はテーマ史であることがとても多い
最終的なゴールの1つはそれぞれの大学の入試問題をクリアすることになるのですが、では実際の入試問題ではどんなテーマが出題がなされているかを少し見て見ましょう。
早稲田政経 日本史
2014
「平安時代における武士の発生と台頭」
「江戸時代の社会経済」
「戦後の日米関係」
2013
「江戸時代の貨幣改鋳と文化」
「日露交渉史」
2012
「古代の土地制度」
「江戸時代の貨幣制度」
などです。早稲田の政経の場合はオーソドックスに時代を区切った出題が多いですが、経済に絡んだ事柄は時代を挟み込んだテーマ史が多くなっています。
慶応経済 日本史
2012
「幕末から昭和の戦争」
2011
「江戸時代の学問」
2010
「鉄道から見た明治史」
2009
「北海道から見た江戸後期」
「鉄鋼業から見た日本経済」
「幕末から昭和初期の国民生活」
というような感じです。
これらのテーマは、教科書を読み、年代記的に前から出来事を並べて学んでいく、という勉強の他に、あるテーマを抽出して、そのテーマがどのような経緯をたどってきているのか、というところをピックアップして整理していくことが必要です。そのような練習や整理を進めていく勉強方法をは、上位校の日本史をクリアしていくためには大きな選択肢になって行きます。
通史を学んだらテーマ史へ
テーマ史の取り組みのタイミングとしては、学校の授業、あるいは予備校などの予習で通史の学習が一旦終了した後が標準的です。通史を学んだ後に、暗記に力を入れるケースや、問題演習に入るケース、一問一答を中心に取り組むなど、色々な進め方がありますが、それらに入る前に、テーマ史を取り組んでいきます。
多くのケースが日本史は時代区分ごとに輪切りで通史を学んでくると思うのですが、時代を縦切りにしてテーマごとの学習をすることで、通史で習ったことのつながりや関連性を整理していくことができ、その出来事、人物の周辺知識や関連知識がつくので暗記にもプラスの作用が期待できます。
テーマ史の具体的学習方法
では、学んでいくべきテーマにはどんなものがあるのでしょうか。ここでは優先順位の高い順に紹介をして行きたいと思います。
経済史
歴史を動かすのは大衆のパワーです。その大衆の行動の原動力は経済です。平たく言えば、暮らし向きがいいのか悪いのか、ということです。日本史選択の人は、経済をあまり大事に勉強していないケースが多く、経済について疎いケースがまま見られます。まずは、この経済史をしっかりと抑えていくべきです。具体的には、
・土地制度と税制史
公地公民から封建制度、そして地租改正、そして農地改革までです。土地の制度と税制はセットになっています。何故ならば、金融機関が制度・体制として確立するまでは人間の最も大きな財産、は土地になります。土地は今の僕らでいればイコール貯金、みたいなものです。土地制度が安定すれば時代は安定し、そこから税金をしっかり得ることができ、政府は潤いますが、土地制度がうまく機能しないと、そこからしっかりと税金を得ることができず、政府の支配体制は弱いものになります。
・農業史
ここは、弥生時代から江戸時代まで、でいいでしょう。
・産業史
産業については平安時代から第1次世界大戦の成金ぐらいまでを。
・金融貨幣史
これは、富本銭から明銭まではさらっと。撰銭から大恐慌時代に対しての金融政策あたりまでをしっかりと、です。
・交通史
交通は律令時代で整備された街道から東海道新幹線くらいまでは確認したいところです。
・貿易史
貿易については古代は遣唐使から、武士の時代は宋・明との中国貿易、大航海時代の影響から家康の時代を経て、鎖国、そして開国してからの幕末の様子はしっかりと、です。
このあたりまででしょう。
外交の歴史
ここは、日本とそれぞれの国との外交の歴史をまとめて見ましょう。対象は、中国、朝鮮半島、ロシア(ソ連)、イギリス、アメリカ、ドイツ、というところで良いでしょう。
地方史
ここは抜けやいところです。歴史はどうしても中央の歴史を厚く見やすいのですが、地方や辺境の歴史も非常に重要です。なんといっても大事なのは、琉球とエゾ、です。この2つは絶対です。その上で、地方制度史については、いわゆる中央集権の時代、奈良・平安と、明治以降、を中心に見て行きましょう。明治の地方議会、などは要注意です。
社会的なテーマ
少し細かい内容になりますがこれらのテーマも頻出ですので必ず押さえたいところです。
・身分制度史
公地公民から武士の誕生、江戸時代の身分制度と四民平等、そして注目したいのは制度内外の下層民の様子になります。
・女性史
ダイバーシティの世の中ですので、このテーマは必ず確認したいところです。ここでは、女性の文化人の変遷についても合わせて押さえるべきです。
・農民の反抗
ここは、平安の国司に対してのものから、地頭と荘園領主の争いや、室町・江戸では一揆の様子、幕末、そして明治での地方での自由民権運動と合わせた活動、というところです・
・法律の歴史
各時代の支配者の中心となる法について確認をして行きます。律令から格式、御成敗式目、分国法、武家諸法度、明治初期、大日本帝国憲法、戦時、日本国憲法、というような流れです。
文化史
文化史は最も覚えるのに苦労をするところでしょう。基本的には単純に覚えていく、ということであれば、これは最後の1ヶ月くらいに集中的に取り組むべきです。ですが、文化史の中でも、政治と密接と関わっている文化人、建築物などについては、整理をしておきたいところです。
例えば、行基の活動は文化人と言うよりは政治的に捉えるべきですし、観阿弥・世阿弥は足利義満抜きに捕らえられませんし、聚楽第については秀吉の背景抜きには考えられません。そのように、政治との繋がりの強い事柄はしっかりと整理をしたいところです。
自分で整理をすることが大事
テーマ史を学ぶ上で大事なことは、これらのテーマについては、出来れば自分で一度教科書を見ながらノートにまとめて見てほしい、ということです。参考書も色々ありますので、それらを見ながらでもいいのですが、きちんと一度目で追うだけでなく整理して見ることで、自分の中に腹落ちしていきます。通史のまとめ、みたいなのは既成のものを使っていいと思うのですが、テーマ史については自分なりにまとめてみることをお勧めします。
その際に勉強のお供に是非したいのが、資料集、です。一般的に一番使われている、浜島書店「新詳日本史」でいいでしょう。日本史の試験では上位校に行けばいくほど、資料をベースにした問題が増えておりますので、常にまとめる際には資料集を見ながら、字面だけでなくイメージでも肉付けをしておきたいところす。
まとめ
通史を勉強してから、問題演習や一問一答などでの暗記に進む前に、テーマ史を学習していくこと、このようなアプローチは思考力や記述力をより重視していく大学受験の流れの中を鑑みても大変有効なアプローチです。是非、1日1テーマ、まとめてみてください。