英語リスニング対策の勉強に使えるスピーカー、使えないスピーカー

computer with speakers

あなたのスピーカーやヘッドフォンは大丈夫?

突然ですが、英語の勉強に使うスピーカーやヘッドフォンのことを、考えたことはありますか?

音楽・映画鑑賞やゲームに使うものなら、臨場感や迫力のために音質にこだわりたいけど、英語のリスニングなんかに使うには、極端に言えば、音が出てればいいや……なんて思っていませんか?

そこに意外な落とし穴があるかもしれません。

音が劣化して聞こえるスピーカーはダメ

スマホで、普段音楽を聴くのに使っているイヤフォンやヘッドフォンでリスニングの勉強をしている人は、このコラムは読み飛ばしてください。音楽がまともに聴けるイヤフォンやヘッドフォンなら問題ありませんから。

パソコンのスピーカーでも、音楽を聴いてイライラしないようなもの、低音(ベース)がある程度しっかり聞こえるものなら、大丈夫です。(特に「低音を太く出す」ような性能はなくてよいです。むしろ、ないほうが耳が疲れずに勉強に臨めます。)

しかし、特にノートパソコンのスピーカーにありがちなのですが、「エラーになったときのアラート音が聞こえればよい」程度のスピーカーで、高音しか聞こえないようなものを使っている場合は、考え物です。

というのは、音質があまりに劣化していると、聞こえるはずの音が聞こえないという現象が生じるからです。

「Yanny / Laurel論争」と音質の劣化

英語圏で論争を引き起こした不思議な音声

2018年5月、英語圏で、「この音声がYannyと聞こえるか、Laurelと聞こえるか」というのが大きな話題となりました。「論争」と言える域に達し、 ウィキペディア日本語版でもエントリ化されています

問題の音声は、下記のツイートに添えられている音声です(このツイートがすべての始まりでした)。再生してみてください。

いかがでしたか? どう聞こえました? 「Yanny」? それとも「Laurel」?

「Yanny」と「Laurel」は、遠いようで、実はとても近かった!

「Yanny」と「Laurel」なんて全然違うじゃん!と誰もが思うと思います。しかし実際には音声の波形としては非常に近いのだとか。その結果、次のようなことが起こります。

ミネソタ大学の音声学教授であるベンジャミン・ムンソンはこのクリップについて、「Yanny」が高周波数域で聞こえ、「Laurel」が低周波数域で聞こえると解釈した。高周波音が聞こえにくい高齢者ほど「Laurel」と聞こえる傾向がある。……アリゾナ大学の言語学・音声学教授のブラッド・ストーリーは、今回の議論は低品質な録音に起因すると論じた。

YannyかLaurelか(ウィキペディア日本語版)

いかがでしょうか? この説明を読んで、納得できましたか?

とてもわかりやすい解説の映像

文字だけでは納得できないという人が大半だと思います。AsapSCIENCEというカナダ拠点の科学系YouTubeチャンネルに、とてもわかりやすい説明が上がっていますから、それを見てみましょう。以前の記事で示した手順に従って、YouTubeビデオの字幕を表示させて見てみてください(字幕なしで行ける人は、もちろん字幕なしで!)。2分58秒ありますが、最後の30秒は本編とは関係ないので、実質2分半程度の解説映像です。

なかなかわかりやすい解説でしたね。

最初に、「この音声を聞く人は、聞く前から『YannyかLaurelか』と尋ねられているので、どちらかが聞こえるのであり、そうでなければ単なる『わやわや』にしか聞こえない」ということが指摘されています。英語の(というより広く外国語の)リスニングという観点からいうと非常に興味深い指摘なのですが、本題からは外れるので、今は先に行きましょう。

解説映像の41秒、”This is a visual depiction of the sound waves of the original YANNY/LAUREL recording” のところからが、本題の解説です。

同じ人が「Laurel」と言ったときの音声の波形と、「Yanny」と言ったときのそれとは酷似しています。つまり、音声としては、両者は人が思っているよりずっと近いのです。

そのあと、1分07秒から11秒のところが、音声の再生に使う機器(スピーカー、ヘッドフォン、イヤホン)と音質についての解説です。あっけなく、一瞬で終わってしまいますが……。

そのあとに、「同じ機器で再生された同じ音声でも、人によって聞こえ方が異なる」として、「耳が若いかどうか」で聞こえ方が違っているということが説明されています。若い耳には高周波の音が聞こえやすく、「Yanny」と聞こえているというのです。逆に言えば、「Yanny」と聞こえていれば耳年齢が若い、ということに……。

ということは、最初に「Yanny」が聞こえた筆者の耳年齢は若いのでしょうか?

いえいえ、単にスピーカーがショボくて、低音が聞こえない/高音だけ聞こえるからです(同じスピーカーで音楽を再生すれば瞬時にわかることですが)。

解説の映像は続いて、ツイッターでのほかの人の解説をダイジェストで紹介しています。ピッチを30%下げると「Yanny」に聞こえ、30%上げると「Laurel」に聞こえるという実証(@xxvさんによる)です。なるほど、これはハッキリしますね。

解説の映像の2分台は全体のまとめ。まずは「YannyかLaurelか」からは離れ、「音声」というものを人間の脳がどう処理しているかについて、概説的なことをわかりやすく解説してくれていますね。そして2分20秒からが「元々の音声は何と言っていたか」の答え合わせです(が、元々の音声のクリアな音質のものは紹介してくれていませんね……こちらです。 via ITmedia)。

最後の約30秒は、この解説の映像を作った人のポッドキャストの紹介ですから、聞き流してしまって構いません。

これで「YannyとLaurelの謎」は解けたと思います。

スピーカーの質によって、聞こえる音がはっきりと違っていた

筆者が「Yanny / Laurel」の音声を最初に聞いたときは、「Yanny」に聞こえました。「Laurelなんて、絶対に言ってない」と断言できる勢いで「Yanny」でした。ビジネス用ノートパソコンのスピーカー(システムエラーが起きたときの音さえ聞こえればいい、という性能のもの)を使っていました。

しかしそのほんの少し後、普段、パソコンで映画を見るときなどに使っているヘッドフォン(特別なものではなく、量販店で2000円程度で買えるものです)で聞いてみると、「Yanny」と「Laurel」が同時に聞こえるのです。

びっくりしました。こんなことがあるのか!と。だって、「Yanny」と「Laurel」は、私が認識している音声としては、どこもかぶってないですからね。

「私の耳がおかしいわけではない。では、なぜ……」

びっくりした数秒後には、「なぜこのようなことになるのか」に深い興味を覚えました。筆者がこの話題を知ったのは、たまたまタイミング的に、ツイッターで盛り上がって非常に多くの人々の話題となり始めたときで、英語圏ではみんなが「Laurelだ」「Yannyだよ」と口々に言い合っているばかりで、解説は見当たりませんでした。

ツイッターでは「Laurel」派と「Yanny」派の真っ二つに分かれていましたが、「YannyとLaurelが同時に聞こえる」という人も2人ばかりいました。だから、私の耳がおかしいわけじゃないんだと安心はできましたが、「そもそもなぜ、こんなことが起きるのか」の解説が出るまでは、まだ少し待ちました。

いや、「少し待った」ことは事実ですが、音声学や音響学が専門の研究者などによる解説は、ものすごく早いタイミングで出ました。それもたくさん。そりゃ、こんな現象が起きたら誰もが興味を持ちますし、「なぜか」を解説できる人は解説したくなりますよね。

そしてそれらの解説からわかったのですが、筆者のノートパソコンの(ショボい)スピーカーでは再生の音質が劣化しすぎていて、高音しか聞こえなかったのです。上で見た解説ビデオにあるように、高音しか聞こえないとき、例の音声は「Yanny」に聞こえるのです。

The sounds in YANNY play at a higher frequency than the sounds in LAUREL.

Do You Hear “Yanny” or “Laurel”? (SOLVED with SCIENCE)

高音ばかりで低音が出ないスピーカー

実は、筆者のこのノートパソコンのスピーカーは、普段から、音楽はまともな音では再生されません。ヘッドフォンの音漏れのような音で、高音ばかりがシャリシャリ鳴って中音から低音がほとんど聞こえません。だから、音楽を聴くときはヘッドフォンを使っています。

しかし、英語でニュース速報をチェックするためにBBCラジオを流しっぱなしにするなどといった用途では、このスピーカーでも特に不便を感じたことはありませんでした(音質は悪いけれども、インターネットを使わずにラジオ受信機で聞くのAMラジオと同程度ですからね)。不便を感じていなかったのは、上の解説映像の最後の方にあったように、脳が補っていたからかもしれません。

ところが今回、この「Yanny / Laurel論争」によって、スピーカーが悪いと、音楽のような繊細なものでなく普通の英語でも、聞こえない(聞き取れない)音があるのだということを思い知らされました。

ですから、学習中のみなさんは――まだ「脳が何かを補う」ことができるほどのベースができていないみなさんは――、聞こえなければならない音を聞こえなければならないように聞かせてくれるような、最低限の品質のスピーカー類を使うようにしてください。そうでないと、正確な音をつかめませんからね。

ちなみにセンター試験の本番で使う機器では、最低限困らない音質は確保されているそうです。実際の音声がYouTubeにアップされているので、関心がある方はご確認ください(2018年度の過去問)。

まとめ

今回は、案外見落としがちなハードウェアの側面から、「英語のリスニング対策を効果的に行うにはどうしたらよいか」について見てきました。

既に十分な品質のスピーカーやイヤホンを使っている人は、そのまま練習を重ねていってください。

しかし、「同じ音声素材でも、スマホのイヤホンで聞ける音と、パソコンのスピーカーで聞ける音とが違うような気がするなあ」といった場合は、イヤホンを使うようにするか、スピーカーを少し見直してみるとよいかもしれませんね。高額なものでなくてもよいので、必要最小限の音が出るものを使いましょう。

(センター試験の本番でもイヤホンを使うことになるので、イヤホン慣れはしておいたほうがよいですよ!)





 

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