前回の当コラムでは、いわゆる「4技能」とは何かを説明し、そのうちの「聞く」能力を伸ばすために必要なのはどのようなことかを確認し、YouTubeに備わっている英語字幕を使う方法をご紹介しました。
今回もまた、字幕を表示してくれる英語の音声素材をご紹介しましょう。
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BBC (British Broadcasting Corporation)
国際ニュースに興味のある人なら、BBCの名前はよく知っていると思います。NHK BS1の「ワールドニュース」でも定期的に放送されていますね。BBCはBritish Broadcasting Corporation(「英国放送協会」)のことです。英国(イギリス)の公共放送です。設立は1922年で、1936年に世界で初めてテレビ放送を開始した局でもあります。
BBCはイギリスにいくつかある放送局の中で最大規模であるばかりか、世界的に見てもトップクラスの放送局です。特にニュース部門 (BBC News) は世界的に著名で、「国際報道」といえば必ず名前の挙がる存在ですね。ニュースのほか、ベネディクト・カンバーバッチ主演の『シャーロック』などのドラマや、リチャード・アッテンボローがパーソナリティを務める自然報道番組なども有名ですが、今回ここで取り上げるのはニュースだけです。
BBCのTwitter利用
現在、世界各地の政府行政機関・企業・報道機関がTwitterを利用しています。BBCも例外ではなく、複数ある局(NHKに「総合」や「Eテレ」、「BS1」といった局があるのと同じ構造です)のそれぞれがTwitterアカウントを運用しているほか、スポーツ、ビジネスなどの部門・番組ごとにアカウントがあったり、ニュースキャスターや記者がアカウントを持っていたりします。地域の局ごとのアカウントもあり、道路情報や気象情報、イベントなど地域ごとの細かいニュースを流していたりします。
それらを全部見ようとしたらとんでもないことになりますが、英語の習得と国際ニュースに興味がある人なら、@BBCWorldのアカウントはフォローしておいて損はしません。@BBCNewsというアカウントもあるのですが、そちらはイギリスの国内ニュースが中心なので、イギリスの人でなければ、世界全体のニュースを扱う@BBCWorldのアカウントの方が有用度が高いでしょう。
@BBCWorldがツイートしているビデオには字幕がついている
その@BBCWorldのアカウントは、BBC Newsのサイトの記事のフィードが多いのですが、1~2分でさくっと見られる長さのニュース映像もよく流しています。
それらの映像に、最近、英語の字幕が入るようになりました。元々BBCがウェブにアップするニュース映像では、英語には字幕をつけていなかったのですが(例外として、インドや中国、日本など外国人のクセの強い英語には字幕がついていました)、おそらく聴覚障碍者でも支障なく情報を得ることができるようにという配慮があったのでしょう、すべての映像に字幕が入るようになったのです。
英語学習者にとって、それを活用しない手はありません。以下でいくつか、実例を見てみましょう。
なお、前回取り上げたYouTubeとは異なり、字幕を表示させる操作をわざわざこちらで行う必要はありません。元から字幕が埋め込まれた状態になっています。
操作方法
本題に入る前に、@BBCWorldがTwitterにアップしている映像の使い方を少し説明しておきましょう。
最初に動画再生ボタンを押すと、下記のような画面になると思います。これは英国(を含む欧州)で必要とされているCookie受け入れ確認の手続きで、単に画面中央の [OK] を押せばよいです。
※Cookieはパソコンでもスマホでもほぼすべてのウェブサイトで使われているもので、利用者を個別に識別し、何度目の訪問かを数えたり、その利用者に適したコンテンツを表示したりするという機能があります。わかりやすい解説が「サルワカ」というサイトにあります。Cookieは別に何か特別なものというわけではありません。日本やアメリカのサイトでは基本的にこの確認画面は出ませんが、私たちはサイトを利用することで、ここで [OK] を押すのと同じようにCookieを受け入れています。でも気になる人は、ブラウザを終了するときにCookieを削除しておいてください。例えばAndroidでChromeを使う場合の削除方法はこちらです。
上記のCookieの受け入れ確認を済ませると、動画の再生が始まります。パソコンの場合、ボリュームの調整は下記キャプチャー画像にあるように、右下のスピーカーのボタンでできますし(スマホではスマホ本体で調整してください)、その横にある矢印が2つくっついたナナメ線のアイコンをクリックすると「全画面表示」になります。「全画面」にしておくと、字幕が大きく表示されて見やすいし、小刻みに停止したり、もう一度聞きたいところを聞くために戻ったりするときの操作がやりやすくなります。
まずは、ヘンリー王子とメーガン・マークルさんのインタビューを見てみよう
例えば、今年5月に挙式を控えているヘンリー王子(エリザベス女王の孫、チャールズ皇太子の次男)が、結婚の前年、2017年11月に初めて、婚約者のメーガン・マークルさんと一緒におこなったメディアでのインタビューの映像です。愛し合う2人、幸せいっぱいですね。
“It was just an amazing surprise” – Meghan Markle on the moment Prince Harry proposed to her https://t.co/7pnNzobbc9 #royalwedding pic.twitter.com/JkSwTAfnDt
— BBC Breaking News (@BBCBreaking) November 27, 2017
特に13秒からの “Just an amazing surprise, it was so sweet and natural and very romantic. He got on one knee.” (「うわあって思いました。とてもすてきで、自然で、それにとてもロマンチックでした。そしてヘンリーは片ひざをつきました」)というメーガンさんの言葉は、リズムといいテンポといい、英語の聞き取りの練習にぴったりです。この部分だけでもいいので、英語の聞き取りは苦手だという人に、ぜひ挑戦してもらいたいと思います。
ヘンリー王子はかなり早口で聞き取りは難しいかもしれませんが、最後の方、1分20秒辺りからの、”So then, we were really by ourselves, which was crucial to me to make sure (that) we had a chance to get to know each other.” (「つまり、本当に2人きりになったんですね。そうすることが僕には絶対的に重要でした。お互いをよく知る機会を確実に得るために」)の部分は、早口の英語を聞き取る練習になります。
聞き取りに慣れていない人は、最初は「字幕を読むついでに音を聞く」感じで始め、2度、3度と繰り返すうちに「音を聞くついでに字幕を見る(読むというより見る)」ように重心を移していってください。そうすることで、最終的には字幕を見ずに音声だけで、これらの言葉が(ただの「わやわやわや」という音ではなく)意味を成す言葉として聞き取れるようになっていきます。
また、メーガンさんとハリー王子はそれぞれ声も前々違うし、話し方も異なるので、片方だけはよく聞き取れるんだけど……ということもあると思います。何回繰り返して聞いてみても聞き取りが難しいという場合は、このお2人の話し方や声と、あなたの耳の相性みたいなのが合わないのかもしれません。別な話し手の発言で試してみましょう。
@BBCWorldで、ビデオを探してみよう
Twitterを使っている人は、@BBCWorldをフォローしておくのが何かと便利でしょうが、Twitterのアカウントを持っていなくてもパソコンでは普通のウェブサイトを閲覧するようにブラウザで見ることができますし、スマホでもTwitterアプリではなくブラウザ・アプリを使えば閲覧はできるでしょう。
@BBCWorldは、Twitterを積極的に使っていて、ツイート数はとても多いです。また、その時々のニュースの質や数に応じて、ツイート数がどっと増えることもあります。したがって、ただ@BBCWorldのページを見て動画だけを探すのは手間です。アカウントのURLの後に、/media をつければ、動画・画像(動く映像と、静止している写真)がついているツイートだけをまとめて表示させることができるので、それを活用しましょう。つまり、https://twitter.com/BBCWorld/media のURLです。
この中でも、写真あり、字幕のつかない動画(BBC Newsのテレビニュースなど)あり、ここでご紹介しているような字幕つきの英語の動画あり、はたまた字幕はついているけれど元の言語が英語ではない動画(例えば、スペイン語のインタビューに英語字幕をつけているもの)ありで、「字幕を見ながら聞き取りの練習をする」という英語学習に使えそうなものを一発で表示させることはできないのですが、自分で確認してみて「これは使えるかも」と思ったものは、TwitterでLikeボタンを押して記録しておくなり、ブラウザのブックマークに入れるなりしてストックしておくとよいでしょう。
ハリー&メーガンのインタビューのほかに、こんなビデオもあります
@BBCWorldのTwitterには、今回ご紹介したもののほかに次のようなビデオがありますので、1本では物足りないという方はチェックしてみてください。これらについて、詳しくは、次回以降に解説していきます。
カナダのトルドー首相のインタビュー:
"We're very happy with trade with Britain".
Canada's PM @JustinTrudeau says he wants a 'seamless' trade deal with the UK that would "flip over the day after #Brexit"https://t.co/kOp8kjORUu pic.twitter.com/8Lua2CY3C3
— BBC News (World) (@BBCWorld) April 18, 2018
マララ・ユスフザイさんのインタビュー:
“I’m just so happy to be home”@Malala on her return to Pakistan for the first time since being shot by Taliban militantshttps://t.co/OyJ6iqBW5z pic.twitter.com/fTxZ5vfFKJ
— BBC News (World) (@BBCWorld) March 31, 2018
米フロリダ州、銃撃事件のあった高校の生徒たち:
Students at the Florida school where 17 people were shot dead say transparent backpacks will not prevent future gun attacks. https://t.co/YrvNHDwqrh pic.twitter.com/wpfOGuQBiX
— BBC News (World) (@BBCWorld) April 4, 2018
なお、BBCはイギリスの放送局なので、BBCの提供する映像では「イギリス英語」に偏るのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、ここで見てきたように、@BBCWorldのアカウントでツイートされているビデオについては、その心配はありません。イギリスだけでなくアメリカ、カナダの英語、それにいわゆる「グローバルな英語」まで、幅広く使われています。
まとめ
このような学習法が「聞く」能力の向上になぜ役立つのかというと、「英語字幕を表示させながら英語を聞く」ことで単語・フレーズの発音のされ方がわかるからということはもちろん、文字で書かれている文章の中で、音声としてはっきり言われている部分(はっきり聞こえる部分)とそうでない部分を確認することができるからです。これが「英語のリズム」や「強弱」をつかむことにおおいに役立ちます。
そして、その感覚を身につけていかないと、英語のリスニングの試験で得点をアップさせることは難しいのです。この点を意識しながら、映像素材に接して感覚を磨いていきましょう。